【Fizcal】会計士も税理士も淘汰される時代がくる

会計士と税理士がいない国エストニア

バルト三国の一角を占めているエストニアは、北欧フィンランドの南に位置する人口およそ130万人の小さな国であるが、電子政府(eガバメント)構想を進めており、仮想通貨などのデジタル革命に対して寛容な政策を取っていることで知られている。

日本を含め、世界の民主国家で行われている選挙では、いまだに投票所に行って投票用紙に候補者や政党の名前を書く方法が主流である。しかしながら、エストニアでは電子選挙が実施されており、スマートフォンさえあれば世界中どこからでも投票することが可能になっている。

また、エストニアは会計士と税理士がいないことで知られている(法人向けにサービスを行っている会計士と税理士が少しはいるようだが)。
エストニア政府は個人や法人の銀行口座をクラウド経由で把握しているため、税金を自動で引き落とすことができるようになっているからだ。

北欧やエストニアに行ったことがある人はお分かりだと思うが、ありとあらゆるものがクレジットカードで購入可能になりつつある。
日本は先進国の中で特殊とも言える現金社会であり、大手外食チェーン店ですらクレジットカードが使えないケースがある。

個人の飲食店などでは、かたくなにクレジットカード決済の導入を拒否する店主などがいるが、現金のやり取りや保管、銀行に持って行く作業などの時間を考えると極めて非効率だ(資本主義社会においては時間が一番のコストなのだ)。

クレジットカード決済の場合、2パーセントから6パーセントの手数料をクレジットカード会社に支払う必要がある。これを理由に「クレジットカードは嫌だ」という店主がいるが、実際には徴税を回避する目的で現金主義を貫いているケースが多いと考えられている。

クレジットカード決済の場合、売り上げが銀行口座に振り込まれるため、収支がガラス張りになるが、現金のやり取りであれば外から見えなくなるためである。

北欧などの国では政府が現金を意図的に使えない方向に持っていこうとしており、クレジットカード決済を普及させることによって、商取引の可視化(監視?)を目指しているとされる。

クラウドの発達とクレジットカード決済の普及によって、エストニア政府は徴税業務を自動化し、行政作業を効率化させたことで知られている。日本の場合、会計処理や税法が複雑ということもあり、会計士や税理士がいなくなる予定はいまのところない。

しかしながら、会計士や税理士も安泰ではない時代が近づきつつあるようだ。会計処理を自動化するICO企業が登場したのだ。
その会社の名は、「Fizcal」である。

既存の会計ソフトは何が問題なのか

私は自営業者であり、会計処理も自分で行っている。最近は会計ソフトが発達しているため、会計士や税理士に頼ることなくほとんどの作業を自分で処理できるようになっている。

Fizcalによると、既存の会計ソフトは中央管理されていることが「けしからん!」ということのようだ。
ICO企業の場合、中央管理されているものを頭ごなしに毛嫌いする傾向にあり、何でもかんでも「とにかく中央管理はダメ!」という議論をしてしまいがちである。

Fizcalも例によって、ホワイトペーパー9ページ目で「既存の会計ソフトは中央管理されており、利用者は個人情報を入れなければならない。中央管理者たちが個人情報をどのように使っているか分かったものではない」と指摘している。

また、Fizcalは既存の会計ソフトについて、以下の点が問題であるとホワイトペーパー10ページで述べている。

・中央管理されている組織は意思決定に時間がかかり、イノベーションを遅らせる。

・利用者や従業員が声をあげても、経営者や管理者たちによって無視される。

・官僚主義的な組織構造によって、革新的なモデルがデザインされない。

Fizcalによると、中央管理されている組織はとにかく動きが遅く、イノベーションが起こりにくいということのようだ。つまり、「中央管理されていないICO企業の商品やサービスの方が素晴らしい」という考えのようである。

しかしながら、2017年9月にアメリカの当局がICO企業を詐欺行為で告発するなど、中央管理されていない会社に関していろいろな問題が発生しているため、一概に「中央管理がダメ!」というは短絡的のように感じる。

それでも、Fizcalはホワイトペーパーの中で中央管理されている既存の会計ソフトの批判を続けている。ホワイトペーパー12ページ目では、監査とセキュリティに関して、以下のように指摘している。

・独立した監査法人による監査は高額になりがちであり、時間がかかりすぎる。

・ログイン時に利用されているIDやパスワードを入力する仕組みが安全ではない。

中央管理されている既存の会計ソフトが抱える問題を、Fizcalは解決可能としており、自信満々に利用するメリットをホワイトペーパー上で説明している。

Fizcalの今後の展開

Fizcalは2017年11月21日からICOを1カ月間実施し、仮想通貨であるFizcalトークンを発行する予定である。
2018年第1四半期に、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアでFizcalのプラットフォームをリリースすることになっている。

また、2018年第2四半期から中国、日本、ヨーロッパ各国でFizcalが使えるようになり、従業員の給与計算などを自動で行ってくれるペイロール・サービスを開始することになっている。

2018年第4四半期には、世界中でFizcalのプラットフォームが利用可能になるようだ。日本を含め、全世界で中央管理されていない会計ソフトが使えるようになるが、英語以外の言語対応については、Fizcalのウェブサイトにもホワイトペーパーにも明記されていない。

ただ、Fizcalは結構面白いサービスを提供する予定になっており、言葉の壁さえクリアできれば世界に拡大する可能性があるような気がする。ホワイトペーパー25ページ目にFizcalの特徴がまとめられており、以下のような機能が使えるようだ。

・写真を撮るだけでレシートの内容を自動的に処理

・シンプルで使いやすいペイロール・サービス

・従業員向けに仮想通貨を支払う仕組み

・24時間のサポート

ここに書かれていることが世界中で実現できれば、Fizcalは会計の世界に革命を起こすかもしれない。
しかしながら、国によって会計方法や税法に違いがあるため、ホワイトペーパーでFizcalが述べているように普及が進むとは限らない。

従業員の給与計算を行うペイロール・サービス一つとっても、日本の場合は会社が社会保険のコストを半分負担する仕組みになっており、マイナンバーを集めるなどの事務作業が発生する。

中央管理されていないICO企業の弱点は、イレギュラーな取引や例外的な取り扱いが必要なケースに対処することが難しいことだろう。
それがあるために、多くの組織は中央管理で統治し、多くの人員を雇っているとも言える。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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