【doc.ai】AIがあれば病院に行かなくてもよい時代が来る?

会話するスマートフォン「Siri」

2005年6月12日、アメリカ西海岸の名門であるスタンフォード大学の卒業式で、ある有名なスピーチが行われた。

多くの人が耳にしたことがあるであろう「Stay Hungry. Stay Foolish(ハングリーであれ。
愚か者であれ 」という名セリフをあのスティーブ・ジョブスが話したプレゼンテーションだ。
「Stay Hungry. Stay Foolish」の言葉自体は、1970年代半ばに発刊された「Whale Earch Catalog(ホール・アース・カタログ)」という雑誌の最終号に掲載されていたものだ。
20代前半にこの言葉を見た若き日のスティーブ・ジョブスは、ハングリーかつ愚か者であり続け、iPadやiPhoneなどのイノベーションを起こし続けてきた。
アップルの製品が提供する機能の中で私が一番驚いたのは「Siri」であり、「Speech Interpretation and Recognition Interface(会話解析認証インターフェイス)」の略であることも最近知った。
Siriは自然言語処理を行って質問に答えることができるため、人間との会話を成立させることが可能になっている。
Siriは人工知能(AI)を用いて対話する機能を備えているわけであるが、AIの仕組みを利用して医療サービスを提供しようとするブロックチェーン企業が登場した。
その名は、「doc.ai」である。
【doc.ai】AIがあれば病院に行かなくてもよい時代が来る?

修復不可能で崩壊した医療システムを立て直す?

ブロックチェーン企業にはよくあることだが、doc.aiの共同創業者や幹部が登場する宣伝動画が、ウェブサイトに掲載されている。
doc.aiの経営陣は、現在の医療システムについて「修復不可能(unfixable)」で「崩壊している(broken)」と厳しく非難している。
具体的にどの国の制度について述べているかは不明であるが、国民健康保険がないアメリカの場合、無保険で医療を受けられない人が一定数存在しており、それが社会問題化して映画などでも取り上げられている。
国民健康保険がある日本でも、医療費の膨張が国家財政を圧迫しており、同様の制度を採用している国や地域でも同じような問題を抱えている。
医療制度の問題に手を付けにくい背景には、世界的に進行している高齢化があると言われている。
高齢者になればなるほど病院に行く頻度が増える傾向になり、日本のように政府が医療費を支えているような社会では、どんどん医療費が膨張していく。
高齢者が医療を受ける際に支払う負担を増やそうとした場合、選挙で支持されにくい政策になってしまう傾向にある。
なぜならば、投票率が若年層よりも高いと言われているシニア層から反対を受け、その政策を唱えた候補者は落選する可能性が高くなってしまうからだ。
また、アメリカのように製薬会社が薬価を決めるような社会になると、薬の価格がどんどん高くなって、保険に入っている人であっても適切な処置を受けられないケースが出てくる。
また、民間の医療保険しか存在しないアメリカでは、国民健康保険の導入に反対するロビイング活動が行われており、多くの利権が生まれていると考えられている。
doc.aiは上記のような社会的、政治的背景を含めて、「修復不可能で崩壊した医療システム」と述べているのだろう。

AIによるプロファイリングが第一歩?

プロファイリングという言葉は一般的に使われないが、私のような金融機関出身者にはお馴染みの単語である。
外貨を購入したり、株式を売買する際、金融機関では顧客に対してプロファイリングを行って、リスク許容度を確認する。
複数の質問にチェックしてもらうだけの簡単な内容であるが、回答に従って自動的にスコアリングが行われ、顧客のリスク許容度を数値化することができる。
doc.aiでは「ロボ・プロファイリング」を行う予定であり、金融機関でリスク許容度を確認するように、スマートフォンを使って、現在の健康状態の確認をする仕組みになっている。
従来の医療システムの場合、患者が病院やクリニックを訪問し、医師の前で会話をしたり、触診をすることによってプロファイリングが行われてきた。
体調を崩したり、病気になってしまった場合、普通の人はどうしたら良いか分からないため病院に行き、専門家である医師の診断を受け、言われるがままに薬を服用することがこれまでの医療制度だった。
doc.aiはロボ・プロファイリングで顧客の健康状態を確認し、膨大なデータ分析を行い、ブロックチェーン技術を用いて提案を行うインフラストラクチャーを構築しようとしている。

病気の症状をシェアすることがポイント?

doc.aiは2017年9月28日からICO(仮想通貨による資金調達)を開始する予定にしており、そこで仮想通貨であるneuron(NRN)を発行する予定にしている。
doc.aiはICOで3,000万米ドル(約33億円)の調達を目標にしており、必要な資金を得た上で2018年中にサービス運用を開始したいとしている。
doc.aiのインフラストラクチャーが注目されている点として、病気の症状をシェアすることがある。
病院に行って診断を受けても、患者が苦しんでいる症状を医師は経験したことがないケースがある。
医師は本を読んだり、臨床経験を積むことで患者にアドバイスを行ったり、治療できるように訓練されているわけだ。
一方、患者としては同じ症状に苦しんでいる人々がどのような状態にあり、どういう治療を受けているのかを知る機会がこれまではほとんどなかった。
セカンドオピニオンという言葉が日本でも一般的になっているが、一人の医師だけではなく、複数の医師の意見を聞く方が適切な治療を受けられる可能性が高くなる。
doc.aiのホワイトペーパー(ICOを行う企業がウェブサイト上に掲載する事業計画書)11ページに、「てんかん」の症状を持つ子供の母親が、doc.aiのインフラストラクチャーを利用したケースが記載されている。
てんかんの発作はいつどこで起こるか分からないため、周りにいる家族は常に気を張りつめた状態でいなければならない。
てんかんの症状がある子供を持つ母親はロボ・プロファイリングに内容を入力し、発作がどのようなタイミングで起こるかについてもdoc.aiのシステムで記録していったという。
これにより、doc.aiの人工知能はてんかんの発作が起こるタイミングや症状などを学んでいくことができたわけである。
匿名性は担保された上で情報が集められるシステム上記の母親のように子供の症状や発作などの情報を提供することで、doc.aiの人工知能は能力を高め、プラットフォーム上で治療やアドバイスの質を自動的に高めていくことが可能になる。
doc.aiはスマート・コントラクトで情報処理が行われるため匿名性が担保されており、情報提供を行った人が特定されることはない。
これまでは、医療の専門知識と経験を持つ医師が多くの患者を診察し、それらのノウハウを属人的に貯めこむしか方法がなかった。
しかしながら、ブロックチェーン技術が登場したことによって、これまで医師が果たしてきた役割をスマート・コントラクトのプラットフォームが中央管理者なしに果たすことが可能になったのだ。
doc.aiが壊れた医療システムを修復できるか要注目である。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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