ICOを利用しハイブリッド・インテリジェンスで資産運用を効果的に行うブロックチェーン企業が登場?

ハイブリッド・インテリジェンスで資産運用を効果的に行うブロックチェーン企業が登場?

私は2002年から2003年の2年間、ニューヨークで債券ブローカーとして働いていたことがある。

1987年に公開されたオリバー・ストーン監督の映画「ウォール街(Wall Street)」の中で、チャーリー・シーンが証券会社で働いているシーンが出てくるが、まさにあんな感じで過ごしていたのである。
私がニューヨークに駐在していた頃から15年近くが経過しているが、当時の同僚たちとはフェイスブック上でつながっており、現在でも時々連絡を取っている。
当時、私が所属していた部署は15人程度の規模だったが、現在でもブローカーとして働いているのは1人だけである。
私のように自分で仕事をしている人もいれば、メディア関連企業のM&A部門の責任者になった人がいたり、フロリダで悠々自適の生活を送っているいる人もおり、人生いろいろという感じである。
ブローカーの仕事はなかなかハードであり、定年まで続けるパターンがそもそもあまりない。
私の元同僚の多くが金融の世界から足を洗っている背景には、資産運用やブローキング、トレーディング業務で人口知能(AI)やロボットを導入する金融機関が増えていることがある。
この間、元同僚の1人とフェイスブックでチャットをしていたところ、「私たちが以前やっていた多くの仕事はAIやロボットがやっていて、人間が入り込む余地がなくなりつつある」と言っていた。
映画「ウォール街」の中で、マイケル・ダグラスが「強欲は善だ(Greed isgood)」という名台詞を吐いたが、現在のウォール街では強欲という感情を持たないAIやロボット、コンピューターなどが金融や運用の世界を支配しているようだ。
そんな中、ブロックチェーン技術を活用しながら、人間とIAの力を組み合わせ、効果的に資産運用を行おうとする企業が登場した。
その名は、「Cindicator」である。

ハイブリッド・インテリジェンスとは何か?

Cindicatorのキャッチフレーズは、「効果的な資産運用のためのハイブリッド・インテリジェンス(Hybrid Intelligence for Effective Asset Management)」である。
また、Cindicatorは、AIによって強化された金融分析手法を活用するとしている。
Cindicatorは、2017年9月12日からICO(仮想通貨による資金調達)を開始する予定にしているが、ハイブリッド・インテリジェンスの構想は、2014年10月に生まれたとウェブサイト上で説明されている。
その後、2016年6月には、ニューヨークでハイブリッド・インテリジェンス・プログラムを加速させ、30万米ドル(約3,300万円)の資金調達に成功したとされている。
Cindicatorによると、ハイブリッド・インテリジェンスを利用することにより、不確定要素が多い新しい経済環境の中でも、効果的な投資判断を行うことが可能になるとしている。
「ハイブリッド・インテリジェンスの説明がなかなか出てこないなあ」と思いながら、Cindicatorのウェブサイトを見ていると、ようやくそれらしき内容が現れた。
「各分野から集められた多くの金融アナリスト」と「コンピューターによる過去の分析モデル」を1つのシステムにしたものが、Cindicatorのいうハイブリッド・インテリジェンスを指すようだ。

CindicatorはLTCMの失敗から学んでいる?

アメリカの金融危機と言うと、2008年のリーマン・ショックを思い浮かべる人が多いかもしれないが、実はその10年前の1998年、同様の金融危機が発生する一歩手前まで近づいていたことがあった。
アメリカのコネチカット州に本拠地を置いていたヘッジファンドであるロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が、1998年に経営危機に陥ったのだ。
LTCMのことを知っている人は、相当な金融マニアだろう。
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者を運用チームに迎え、専門的な金融工学を駆使してLTCMは1994年に運用を開始し、「ドリームチーム」と呼ばれ、日本の大手銀行などを含む世界の金融機関からの投資が殺到した。
その後の4年間、LTCMは年間40パーセント以上の利回りを実現し、当初から投資をしていた場合、資産がおよそ4倍になるという驚異的なパフォーマンスを上げた。
しかしながら、1997年にアジア通貨危機が発生し、その後の1998年にロシア国債のデフォルトが明らかになると、LTCMは一転して経営不安に襲われることになった。
LTCMでは、スーパー・コンピューターを使って自動的にリスクを計算し、投資判断を行い、注文を出すシステムを採用していた。
LTCMのシステムでは、ロシアで債務不履行が発生する確率は100万年に数回であると算出していたため、ロシア国債の価格下落が明らかになっていた状況でも、買いポジションを持ち続けていたとされる。
LTCMのことをもっと深く知りたい方は、「最強ヘッジファンドLTCMの興亡(日経ビジネス人文庫)」をお読み頂くとして、私が何を言いたいかというと、運用や投資のすべてをコンピューター任せにしていると、破滅を迎える可能性が結構あるということである。
その点、CindicatorはLTCMの失敗に学んでいるのか、人間である金融アナリストの力を活用しながら、コンピューターやAIの分析力を組み合わせて運用するというハイブリッド戦略を選択している。
元ブローカーとしての意見だが、これはこれでなかなか合理的なように感じる。

ブロックチェーン技術は投資、運用サービスに向いている?

Cindicatorは中央管理者がいないブロックチェーン技術を用いて、人間とコンピューターの力を組み合わせて、これまでにない投資、運用サービスを提供しようとしている。
従来の金融機関で投資商品を買ったり、運用を行おうとする場合、その金融機関が所属しているグループが売りたいものを推奨されたり、偏った運用レポートを見させられたりするパターンが多かった。
「ポジション・トーク」という言葉を聞いたことがあるかもしれないが、米ドルをたくさん持っている人が講演やスピーチを行うと、意識しているかしていないかは別として、「米ドルはこれから上がる」的な内容になりがちなのだ。
人間は心理として、自分が持っているものを上昇させるように持っていくようになっており、現在投資や運用を行っている人はポジション・トークに注意が必要だ。
Cindicatorはブロックチェーン・プラットフォーム上で情報を集約し、人間とAIの力を合わせる形になっているため、誰がどのような投資、運用判断を行ったか分からない仕組みになっている。
これにより、Cindicatorではポジション・トークに惑わされる心配がない。
ブロックチェーン技術が投資、運用サービスに向いていると思うのは、このような背景からである。

Cindicatorのような投資、運用サービスは今後も開発が予想され、市況が安定している時や上昇基調の時は利益を上げられる可能性がある。
問題は、1998年のロシア危機、2008年のリーマン・ショックのような市場激変が発生した場合である。
この時、人間とAIの力を組み合わせたハイブリッド・インテリジェンスがどのような対応をするか見ものである。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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