欧州中央銀行副総裁がビットコイン投資に警報を鳴らす

2017年12月上旬に久しぶりに仮想通貨業界が調整局面に入り、イーサリアムやビットコイン・キャッシュ、ライトコインなどの主要仮想通貨価格が20パーセント以上下落した。

こちらのサイト「bit-life(ビットライフ)」の記事「ビットコイン価格が10,000米ドルの大台を突破! 」でもお伝えしている通り、ビットコイン価格が2017年11月に10,000米ドルを突破し、11月29日には11,000米ドルも超えた。

ビットコインは2008年に、サトシ・ナカモトという謎の人物によってインターネット上で提唱された仮想通貨であるが、その背景には法定通貨による送金手数料が高く、銀行システム経由の決済時間が長いという問題があったとされる。

しかしながら、ビットコイン価格が10,000米ドルに近い現状では、法定通貨を銀行経由で送金するよりも、ビットコインを送金する方がコスト高になっており、取引量の拡大に伴って決済時間も10分以上かかっており、大きな矛盾を抱えているわけだ。

そのような背景を投資家が知っていたかどうかは不明であるが、11月30日にビットコイン価格は9,000米ドル代前半まで下落し、主要仮想通貨も大幅な調整局面を迎えている。

仮想通貨に限らず、価格がついているものが一本調子で上がり続けることはリスクであり、今回の調整による下落幅が20パーセント程度であったことは「ラッキーだった」と述べる仮想通貨のアナリストもいる。

ただ、いろいろな国や地域で仮想通貨投資に対する警報を鳴らす要人が出てきており、ビットコインなどを取り巻く環境は順風満帆とはいかなさそうだ。

今回は、欧州中央銀行副総裁であるVitor Constancio氏のコメントを中心に、仮想通貨に対する金融当局の意向を紹介したい。

投資家は高値で購入するリスクを取っている

Constancio副総裁は、アメリカのテレビ番組であるCNBCに出演し、ビットコインの価格について、「投機的な水準にある」と述べ、「投資家は高値で購入するリスクを取っている」とも付け加えた。

Constancio副総裁は、欧州中央銀行が仮想通貨を規制する立場ではないとしながら、「我々は特定の資産価格について指摘する責任はなく、その方法も持ち合わせていない。それは中央銀行の仕事ではないからだ」と説明したのである。

欧州中央銀行の総裁であるMario Draghi氏が、2017年9月に「欧州中央銀行は仮想通貨を規制する権限を持ち合わせていない」と発言したが、今回のConstancio副総裁のコメントはDraghi総裁の考えを裏付ける形になった。

Draghi総裁の「仮想通貨を禁止したり、規制したりする力を我々は持っていない」という発言については、ヨーロッパ内外においてさまざまな憶測を呼んだ。

ヨーロッパにおいては、中国政府や韓国政府が行ったようなICO禁止措置は取られないのではないかという前向きな捉え方をする仮想通貨業界関係者もいる。

11月24日に掲載した記事「仮想通貨イベントに初参加!」でも紹介したが、中国や韓国でICOを行おうとした企業がヨーロッパに拠点を移す動きが目立っている。

Constancio副総裁がテレビ局とのインタビューで語った通り、欧州中央銀行に仮想通貨取引を規制する意向は今のところないようである。

欧州中央銀行の動きを見て、中国や韓国でICOをしようとしていた企業がヨーロッパで登記を行っているかどうかは不明であるが、Draghi総裁やConstancio副総裁の発言が安心材料になっていることは確かなようだ。

ただ、ヨーロッパのややこしいところは、金融政策は欧州中央銀行、政治は各国政府が主導権を持っているということである。

ユーロの金利や流通量を決定しているのは欧州中央銀行だが、ユーロ圏の国にはそれぞれの政府が存在している。ヨーロッパでは国単位で選挙が行われており、それぞれの首相や大統領が政治的リーダーシップを発揮しているのである。

そのため、各国の金融当局が「仮想通貨取引を取り締まるべき」と判断すると、欧州中央銀行の意向に関係なく、ICO企業などを告発する可能性がある。

トルコ政府はビットコインを不適切とする声明を発表

ヨーロッパに地理的に近いトルコは、ヨーロッパ連合への加盟を目指しているが、現在も交渉が続けられている。

トルコは長年ヨーロッパ連合に入ろうとしているのだが、政治的な問題などが絡み合っており、なかなかうまくいかないようだ。

そのトルコ政府が2017年11月、「ビットコインの売買は投機的なものであり、イスラム教徒には不適切な投資手法」とする声明を発表した。

イスラム金融という言葉を聞かれたことがあると思うが、これはイスラム教の聖典であるコーランの教えに従って展開されている金融ビジネスのことを指している。

コーランでは金利というものが認められておらず、イスラム教徒が多い中東の国やイスラム圏においては、利子を取らない形の金融サービスが提供されている。

また、イスラム教では豚肉を食べたり、アルコールを飲むことも禁じられており、これらの事業を行っている企業を投資対象とする投資信託などの金融商品販売も認められないことになっているのだ。

トルコはイスラム教徒が多い国であり、政府の方針などもイスラム教の影響が入ることがあり、今回の「ビットコインは不適切」という声明は、コーランの教義に沿った方針であると考えられている。

ポジション・トークが飛び交う金融業界

ここまで紹介してきた中央銀行や政府による声明などについては、ポジション・トーク(自分にとって都合の良い発言)の余地が少ないかもしれない。

ただ、さまざまな金融機関やヘッジファンド関係者などが、最近になってビットコイン価格や仮想通貨業界の方向性についていろいろなコメントをしており、これらはポジション・トークが入っている可能性が高いため注意が必要である。

ヘッジファンドの中には、ビットコインなどの仮想通貨購入をしばらく控えるよう、顧客にアドバイスしているところが出ていると報道されている。

これだけを見ると、「仮想通貨価格が暴落して、顧客がダメージを受けないために警報を鳴らしている善良なヘッジファンド」と感じるかもしれないが、往々にして彼ら、彼女らは仮想通貨の売りポジションを既に持っていたりする。

仮想通貨の売りポジションを持っているということは、仮想通貨価格が下落することで利益を得られることを意味する。

つまり、顧客に仮想通貨を売らせて価格をつり下げ、自分たちが利益を得るためのポジション・トークである可能性があるわけだ。

逆に、「ビットコインは50,000米ドルを目指す」と強気の発言をしている金融関係者もいたりするが、これらの人たちは仮想通貨の買いポジションを保有していることがある。

ポジション・トークのない情報源を見極めながら、冷静に投資をしていくことが仮想通貨取引においては重要になっている。

ただ、インターネット上に飛び交っている仮想通貨のポジション・トークを見定めるのは簡単ではないだろう。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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