アメリカの不動産バブルを経験した元外資系金融マンがビットコインがバブルなのか考察してみた

アメリカの不動産バブルを経験した元外資系金融マンがビットコインがバブルなのか考察してみた

1ビットコインの価格が4,500米ドルを突破

2017年8月、1ビットコインの価格が史上初めて4,500米ドルを突破し、日本円でも50万円越えを記録し、大きな話題になっている。

ビットコインをはじめとする仮想通貨への投資で、1億円以上の資産を保有する「億り人(おくりびと)」と呼ばれる人たちも登場している。
2017年初からビットコインは4倍以上、イーサリアムは40倍以上に価格上昇をしており、仮想通貨の高騰ぶりを見て、バブルの予兆を感じている人も少なくない。
法定通貨とは違い、仮想通貨の場合は政府の規制がかかりにくいため、詐欺コインを発行したり、怪しいビジネスを展開する企業があっても確認が難しいという事実はある。
2000年代前半にITバブルが起こった時、IT系企業であればどんな会社でも株価が上がっていった現象と、現在のブロックチェーン企業の様子が似ているという識者もいる。
私自身、仮想通貨評論家としてさまざまな仮想通貨の記事を作成しているが、世界中でブロックチェーン技術を活用したビジネスが次々と生まれており、ICO(仮想通貨による資金調達)によって資金を確保しやすくなっているのは事実だろう。
今回は、アメリカの不動産バブルを経験した元外資系金融マンである私が、ビットコインの現状がバブルなのかどうかについて考察してみることにする。

アラン・グリーンスパン元FRB議長の言葉

私は2002年、2003年の2年間、ニューヨークに駐在しており、富裕層向けの債券ブローカーとして働いていた。
当時のアメリカは、銀行と証券の兼業を禁止していた法律が撤廃された後であり、私は債券ブローカーという証券業務を行いながら、不動産融資などの銀行業務も行っていた。
今から考えれば無茶苦茶な状況だったのだが、2008年に発生したアメリカの金融システム不安は、銀行と証券の兼業を認めてしまったことに背景があるのではないかと個人的に考えている。
私がニューヨークで働いていた時、アメリカの中央銀行である連邦準備制度(FRB)の議長はアラン・グリーンスパン氏だった。
グリーンスパン氏は、1987年から2006年までFRB議長を務めたのだが、ニューヨークの名門音楽大学であるジュリアード音楽院でクラリネットを学び、サクソフォーン奏者としても知られている珍しいセントラル・バンカーだった。
2008年に金融危機が発生した際、アメリカで不動産価格が高騰していたにもかかわらず、2006年までのFRB議長在任中、低金利政策を採用していたグリーンスパン氏に批判が集中した。
リーマン・ショック後のアメリカのメディアは、グリーンスパン氏を「これでもか!」という具合にバッシングしていたのを覚えている。
それを見ながら、非常におかしく感じたものだ。
私がニューヨークで働いてた2000年代前半、グリーンスパン氏は「金融の神」、「マエストロ(名指揮者)」と各方面から称えられており、「ニューエコノミー(新しい経済)」の創造主と考えられていた。
現在では、ニューエコノミーという言葉を聞かなくなったが、2000年代前半のアメリカでは頻繁に話題になっていた理論である。
ITを活用することによって企業や流通の情報網が整備されるため、在庫調整がスムーズになり、従来発生していた景気循環が消滅するというのがニューエコノミー理論である。
今から考えればおかしな話だが、私がニューヨークで働いてた時は、金融機関のストラテジストやアナリストなどのインテリと呼ばれる人たちが、ニューエコノミー理論を講演などで延々と語っていた。
不動産バブルを背景にした好景気が、「永遠に続いてほしい」という希望的観測を正当化させるためにニューエコノミー理論が登場したのではないかと私は考えている。
高騰を続けていた不動産価格について、グリーンスパン氏は「バブルではなくフロス」と表現した。
また、「バブルが起こっている時は、バブルであることを確認することはできない。
バブルが弾けた後に初めてバブルを確認できる」とも述べている。
グリーンスパン氏のこの言葉は示唆に富んでいる。
まず、フロスの意味だが、これは歯間を掃除するフロス(floss)ではない。
グリーンスパン氏が言ったのは、カプチーノなどの上にのっているキメの細かい泡のことであり、あれを英語ではフロス(floth)と言うのだ。
泡のフロスは大きく膨らむことはないため、破裂しても周りに飛び散ったりすることがない。
バブルの場合、風船のように膨らんで最終的には爆発して大きな影響を与えることになる。
グリーンスパン氏は、アメリカの不動産価格の高騰が行き過ぎではあると考えていたが、破裂するバブルではなく、小さな泡であるフロスであると考えていたわけだ。

アメリカの不動産には実需があったが、ビットコインは投機?

「金融の神」と考えられていたグリーンスパン氏でさえ、アメリカの不動産バブルを読み違えていたくらいであるため、普通の人がバブルを予測することは非常に難しい。
「バブルの時にバブルを確認することはできない。
弾けて初めてバブルと分かる」というグリーンスパン氏の言葉は、ビットコインにも当てはまると考えられる。
私がニューヨークで働いていた時、同僚がニュージャージー(ニューヨークの隣の州で、家族がいる人たちはここで一軒家を買うことが多い)で200万ドル(約2億2,000万円)の自宅を購入していた。
ニューヨークの金融機関で働いていたため給料は悪くなかったのだが、それでも会社員が買う不動産としては高めである。
「そんな高い家を買って大丈夫なのか?」と私が同僚に聞くと、「アメリカの不動産は実需があって、今後も価格が上がり続けるから大丈夫」と言っていたことをいまだによく覚えている。
実需による価格上昇と考えられていたものが、実は投機で不動産バブルは弾けることになるのだが、ビットコインの場合はどうだろうか?ビットコインを使って決済できる商店は日本でも増えているが、まだ限られており、ショッピング目的でビットコインに投資している人は少数派だろう。
この観点からすると、アメリカの不動産のような「購入してそこに住む」という実需は、ビットコインにはないように考えられる。
ビットコインなどの仮想通貨に投資する人のほとんどは、将来の値上がりを期待して購入しており、その意味では投機を行っていることになる。
ただ、投機が必ずしも悪いわけではなく、投機によって市場が成長し、整備されることになるのである。
アメリカには高めの金利が付いた社債市場である「ハイイールド・マーケット」が存在しているが、日本には同様のものはない。
アメリカでハイイールド・マーケットが成長したのは投機資金が流入し、取引が活発化して市場に厚みが生まれているからである。
実需だけの取引で市場が成長することはないため、ビットコインなどの仮想通貨に投機資金が入っているのは、決して悪いことではないのである。

ポイントは余裕資金で分散投資すること

現在のビットコインがバブルであるかどうかは誰にも分からず、将来的に暴落が起こった時に初めて「あの時はバブルだった」と確認できることになる。
生活資金などをビットコインに投資することは賢明ではなく、余裕資金を使い、複数の仮想通貨に分散して投資することがポイントになる。
金融の基本であるポートフォリオ理論に基づいて投資することがポイントである。

コインマン
日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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