【Nebeus】仮想通貨を眠らせないICO企業が誕生

銀行は公共企業になる

私は現在、仮想通貨評論家とコンサルタントの仕事をしているが、以前は外資系金融機関で15年以上働いていた。前職に対して厳しい意見を述べているが、必ずしも悪い職場だったわけではない。

一番よかったのは、すべての有給休暇を消化できたことだ。外資系金融機関の場合、日系の銀行や証券会社などと比べて、休暇が取りやすいと言われている。

私が所属していたところは外資系金融機関の中でも特に休暇が取りやすく、「年内にすべての休暇を消化すること」をチームの全メンバーに課していた上司もいたくらいだ。

しかしながら、組織としての体質はかなり問題があった。2008年の金融危機によって、アメリカ政府から天文学的な公的資金が注入され、いろいろな意味で当局からのモニタリングがきつくなったことが影響していたのかもしれない。

また、日本を含め各国の金融当局との関係も微妙な状況が続いていて、規制産業である金融機関としてビジネスの方向性がぐらついていたところもあったのだろう。金融ビジネスの場合、一旦参入してしまうと撤退することが難しくなる。

決済機能を一度提供してしまうと、「明日から止めます」と言えなくなるからだ。にもかかわらず、長期的な展望ではなく、短期的な利益を追求する傾向が強まっており、「儲からなければすぐ撤退」といういわゆる「四半期資本主義」の典型例になってしまっていた。

四半期資本主義とは、3カ月単位で利益が出なければ業務を見直すという超短絡的なビジネス手法を指す。私は自分でビジネスを始めた際、「反四半期資本主義」を掲げ、取引先や読者様と長期的な関係を築くことを念頭に置いた。

四半期資本主義で経営をしてしまうと、結果的に損をしてしまうことを外資系金融機関勤務時代に身をもって経験していたからだ。短絡的経営を続ける銀行に対して、疑問を持っているのは私だけではなかったようだ。

今回紹介するICO企業である「Nebeus」も既存の銀行のやり方を疑問視しており、
ウェブサイトの最初の部分で「銀行は遅かれ早かれ公共企業になる」と宣言している。

銀行はコモディティになるべき

Nebeusはウェブサイトの中で、「銀行はコモディティになるべき」とも述べている。
コモディティとは、「提供されているものが一般化して、差別化が難しくなった商品やサービス」のことを指す。

コモディティの典型例はガソリンだろう。ガソリンはどこで買っても同じものが手に入るため、価格でしか評価しようがないコモディティである。その証拠に、1円でも安いガソリンスタンドを探す人が多くなっている。

NebeusはICO企業であり、現在の銀行がやっているローン業務などをスマート・コントラクトで簡単に提供できるとしている。このことから、「銀行はコモディティになるべき」と主張しているのかもしれない。

流動性にこだわったICO企業

Nebeusは2017年11月3日から12月31日までICOを実施する予定であり、最大150万米ドル(約1億7,000万円)の資金調達を目指している。

Nebeusはローン業務を展開するICO企業らしく、ウェブサイト上で流動性にこだわった記載をしている。
まず、Nebeusが発行する仮想通貨であるNebeusトークンの保有者に対して、年間収益の20パーセントを分配すると宣言している。

また、ICO企業としては珍しいことであるが、会社を売却する際の手続きについてもウェブサイトで言及している。Nebeusが別の企業に買収された場合、Nebeusトークンの保有者は売却額の20パーセントを配分されると説明している。

また、Nebeusトークンは少なくとも3つの仮想通貨取引所で交換が可能になる予定であるとウェブサイト上で述べられている。しかしながら、どの仮想通貨取引所で交換可能になるのかは不明であり、期日についても言及はなかった。

主要ビジネスはソーシャル・レンディング

Nebeusは2014年からロンドンとバルセロナでビジネスを展開しており、「最近できたその辺のICO企業とは一緒にしないでほしい」という雰囲気を、ウェブサイトやホワイトペーパーからかもし出している。

Nebeusが提供する予定の主要業務として、スマートコントラクトを活用した個人間ローンをあげられている。Nebeusは、ビットコインのローン・ビジネスなどをこれまで提供してきており、この分野においては、トップ3位の業者であるとホワイトペーパー9ページ目で説明している。

日本でもソーシャル・レンディングというサービスが普及し始めており、個人が数万円から投資を行って、5パーセントから10パーセントの高い分配金を毎月受けられることから人気になり始めている。

日本のソーシャル・レンディングの場合、投資先が不動産会社であったり、中小企業であったりするなど、個人から法人向けに流動性を供給する仕組みになっている場合がほとんどだ。

立ち上げて間もない不動産会社や中小企業の場合、銀行などから融資を受けることが難しいケースが日本ではまだ多い。
ビジネスのアイデアはあっても、元手がなくて事業展開が難しいと感じている起業家や経営者が日本には結構いるのだ。

ソーシャル・レンディング業者がこれらの不動産会社や中小企業を審査し、高めの金利で個人から資金を集め、融資する仕組みを構築したわけである。
2017年に入り、財務局から行政処分を受けたソーシャル・レンディング会社があり、少し揺れている業界ではあるが、個人の運用手段として認知されつつある。

一方、海外のソーシャル・レンディング業者は、個人対個人の融資サービスを仲介しているところが多い。

例えば、私が仮想通貨研究所を立ち上げるために5万米ドル(約560万円)を調達したい場合、海外のソーシャル・レンディングに登録し、自分の経歴やビジネスプランなどを明記すれば、複数の個人から資金を集められる可能性がある。

仮に20人から資金を集められれば、1人当たりの出資額は2,500米ドル(約28万円)ですむ。私のビジネスが高リスクだと判断されれば、金利が20パーセントなどと高めに設定され、うまく行けば投資家は高金利を受け取ることができるわけだ。

仮想通貨は使い道がない

Nebeusが提供しようとしているのは、正にこの個人間融資業務である。ただ、既存のソーシャル・レンディング業者とは違い、Nebeusが提供するのはスマートコントラクトによる仮想通貨の個人間融資だ。

日本でも家電量販店でビットコインが使えるようになるなど、仮想通貨の決済機能は高まりつつある。しかしながら、多くの投資家はビットコインを投資対象と考えており、支払いのために購入する人は稀である。

短期的な投資家の場合、ビットコインなどの仮想通貨を買ってから価格が上昇すればすぐに売却してしまうだろう。一方、長期的な投資家は、購入後しばらくの間保有しておいて、数倍になってから売却したいと考えているケースがある。

長期的な投資家の場合、仮想通貨を買って眠らせておく形が多くなる。Nebeusはこれらの投資家に対して、仮想通貨を有効活用するプラットフォームを提供しようとしているわけだ。

仮想通貨を眠らせている投資家にとっては、Nebeusを使うことで仮想通貨を誰かに貸すことが可能になり、うまくいけば高金利で運用することができ、さらに資産を増やすことが可能になる仕組みである。

使われていない仮想通貨を使ってビジネスをしようとするNebeusは、なかなかのやり手である。

コインマン
日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。