なぜ日本は仮想通貨先進国なのか

登録済み仮想通貨取引所が誕生!

2017年9月29日は、日本の仮想通貨業界にとって歴史的な日になった。金融庁から発表があり、財務局で登録が完了した仮想通貨取引所11社が公表されたのである。11社のうち9社は既存の仮想通貨取引所であるが、2社は新規参入組である。

【財務局で登録が完了した仮想通貨取引所11社】

・マネーパートナーズ
・QUOINE
・bitFlyer
・ビットバンク
・SBIバーチャル・カレンシーズ
・GMOコイン
・ビットトレード
・BTCボックス
・ビットポイントジャパン
・フィスコ仮想通貨取引所
・テックビューロ(ZAIF)

金融庁発表のPDFはこちらから確認できます。

2016年に改正資金決済法が国会で成立し、2017年から施行が始まったことで仮想通貨取引所の登録制度が開始された。内部管理の仕組みやシステム態勢が整備されていない仮想通貨取引所は登録が難しいことから、投資家は比較的安心して取引ができることになる。

金融庁の発表資料には登録された11社の概要に加えて、各仮想通貨取引所が取り扱っている仮想通貨も掲載されていることから、仮想通貨評論家をしている私のような者にとっては便利な資料になっている。

これから仮想通貨取引をしようとしている人にとっても、金融庁の発表資料は分かりやすく、仮想通貨取引所を選ぶ際の参考にもなる。今回登録が行われた11社に加えて、登録申請を行っている17社の審査が継続して行われている。

今後も登録済み仮想通貨取引所の発表が見込まれており、金融庁と財務局が検査や監督を行うことで、秩序だった中での仮想通貨取引拡大が期待されている。日本は「規制でがんじがらめ」という印象が強い国かもしれないが、仮想通貨取引所の登録制度は海外からも評価する声がある。

韓国がICOを全面禁止

仮想通貨に関して、日本は世界で最初に国レベルの法整備を進めており、韓国も同じような方向に進もうとしていると一部では報道されていた。しかしながら、日本で登録済み仮想通貨取引所の発表が行われた9月29日、韓国の金融当局がICO(仮想通貨による資金調達)を全面禁止すると現地の報道機関が伝えた。

韓国からこのニュースが伝わったことで、ビットコイン価格は9月29日午前中に一時3パーセント下落するなど大きな影響があった。ここ数カ月間、韓国ではリップルやイーサリアムの取引高が世界トップであったと言われている。

韓国市場でICOが禁止されるとの報道が出たことで、仮想通貨全体の取引が縮小する可能性があり、このことからビットコイン価格が大きく下落したと考えられている。

ニューヨークは仮想通貨に対する規制が厳しい

仮想通貨発祥の地とされるアメリカであるが、意外にもニューヨークでは仮想通貨に対する厳しい規制が整備されている。ニューヨーク州では、2015年に免許制度である「ビットライセンス」が施行され、仮想通貨取引所は銀行などの金融機関と同等の環境整備が求められるようになった。

世界中どこでもそうであるが、政府は銀行に対して厳しい監督を行う傾向にある。ニューヨーク州は銀行並みの内部管理態勢やシステム整備を仮想通貨取引所にも求めたことになる。

大手仮想通貨取引所の場合は何とかなるかもしれないが、資金が限られているベンチャー企業などはニューヨークで仮想通貨取引所を運営できなくなり、撤退するところが相次いだ。

ニューヨーク州がこのような厳しい規制を実施した背景には、過去の仮想通貨取引所での事件があった。2014年に、大手ビットコイン取引所だったマウントゴックスが経営破たんし、投資家が預けていた法定通貨とビットコインが引き出せなくなるという事件が発生し、日本で大きな問題になった。

このマウントゴックス事件を受けて、日本政府が腰を上げて法整備を進め、改正資金決済法の施行につながったとされている。マウントゴックスだけではなく、世界では仮想通貨取引所でさまざまな問題が発生し、ニューヨーク州はビットライセンスという仕組みによって、仮想通貨取引所の参入規制を強めることになった。

日本とニューヨーク州の動きは同じように見えるかもしれないが、日本の場合、登録を行うことで仮想通貨取引所を運営可能だが、ニューヨーク州の場合、ビットライセンスという免許を取らなければならなくなっている。

登録と免許の違いが分かりにくいかもしれないが、審査の厳しさは大きく異なり、免許取得の方がかなり難しい。ビットライセンスという厳しい規制により、中小の仮想通貨取引所は、ニューヨークに本拠地を置いておくインセンティブがなくなってしまった。

悩めるタイの証券取引委員会

各国の中央銀行幹部や金融当局担当者が、仮想通貨に関してさまざまなコメントを行っているが、タイの証券取引委員会が9月14日に行ったICOに関する発表がニュースで報道されていた。

タイの証券取引委員会がタイ国内でICOを実施する企業について、「事前に証券取引委員会で審査を受け、内部管理やシステム態勢などに問題がないことを報告しなければならない」と発表したのである。

タイの証券取引委員会は、中国政府が9月4日に行ったようなICO禁止措置を発表したのではなく、投資家を保護し、秩序だった中でICOを行ってほしいという意向を示したのである。

その証拠に、中小企業などが資金を調達する手段として、ICOが有効であることをタイの証券取引委員会は認めている。
仮想通貨という新しい仕組みを使い、イノベーションを起こすことは歓迎するが、犯罪やマネーロンダリングの手段としてのICOは認めないという姿勢を鮮明にしたとも言える。

日々進化している仮想通貨の技術に対して、政府がついていけないというタイの証券取引委員会の悩みが発表された形になった。

ICOの規定がない改正資金決済法

実は、日本政府もタイの証券取引委員会と似たようなジレンマを抱えているようだ。2017年から施行されている改正資金決済法は、仮想通貨を日本円などの法定通貨に準じる決済方法と認める法律であり、「仮想通貨法」とも呼ばれている。

しかしながら、改正資金決済法にはICOに関する規定がなく、日本でICOを行う場合にどのような手続きを取ればよいか明文化されていないのである。「仮想通貨でイノベーションを起こしてほしいけど不正はダメよ」というのが日本政府の方針であり、タイの証券取引委員会と基本的に同じスタンスのようである。

改正資金決済法の条文をすべて読んだ人はあまりいないと思うが、私は仮想通貨評論家であるため、上から下まで読んでいる。何を隠そう私は金融機関で働いていた時、当局対応と呼ばれる役所の窓口業務を行っていた。

前職時代、銀行法や貸金業法などの法律をかなり読み込んでいたため、改正資金決済法を読むことはそれほど苦痛ではなかった。

改正資金決済法にICO規定がないため、日本にある企業はICOをしてもよいのかどうか分からなかったと言われている。しかしながら、ブロックチェーン企業が個別に金融庁、財務局に話をするうちに、日本でICOを行っても問題ないという感触を得たようで、実際にICOを実施するところが出始めている。

「法律の条文には明記せず、ICOを検討している企業は個別に相談」というのがいかにも日本の当局らしいやり方だが、中国のようにICOが全面的に禁止されるよりはましである。

2016年に改正資金決済法が国会で成立し、それを見たシンガポールの仮想通貨取引所が日本に本拠地を移すなど、今までのところ日本政府の取り組みは世界で前向きに捉えられているようだ。

しかしながら、日本が仮想通貨先進国になるためには、官民が更に協力し、秩序だった状態でイノベーションが生まれる土台を醸成しなければならないだろう。

コインマン
日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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