法定通貨では面倒な相続手続きも仮想通貨であれば簡単に処理が可能?

法定通貨では面倒な相続手続きも仮想通貨であればブロックチェーン技術で簡単に処理が可能?

私は金融機関で富裕層顧客向けの営業を行っていたことがあり、ほとんどの顧客の悩みは「次世代にどうやって資産を継承するか」であった。

日本の場合、相続税率が高いこともあって、どんなにお金持ちであっても、「3代過ぎると普通の人になる」と言われている。
富裕層は相続対策のため、海外で生命保険に入ったり、子どもや孫の出産をアメリカで行うなど(アメリカは出生法を採用しているため、アメリカで生まれた人は自動的にアメリカ国籍を得られる)、ありとあらゆる方法を取っているが、政府は政府で税金逃れを防止するため、遅れ気味ではあるが規制強化を行い、いたちごっこの様相を呈している。
これまで相続と言えば法定通貨のことしかなかったが、1ビットコインの価格が2017年8月に史上初めて50万円に到達するなど、仮想通貨の時価総額が急騰しており、資産価値の膨張に伴って相続方法についても関心が高まっている。
そんな中、仮想通貨の相続サービスを行う企業がラトビアで登場した。
その名は、「APNIKA」である。

脈(Pulse)がなくなった時、デジタル(Digi)に登場するプラットフォーム?

APNIKAが提供しているのは、DigiPulseという仮想通貨を通じた遺産相続サポートである。
DigiPulseの「Digi」はデジタルという意味で、「Pulse」は脈のことを指していると考えられる。
テレビドラマなどで、登場人物が病院で最期を迎える際、「家族みんな仲良く助け合って生きていくんだよ」などの言葉と共に、脈を確認するための機器が「ピッ、ピッ、ピ―――」となる場面があるが、DigiPulseのPulseはまさにあの機器の音のことだろう。
DigiPulseのロゴマークにも、あの機器の画面と思われるマークが含まれている。
APNIKAはウェブサイトの最初の部分で、「我々は小さな会社だが、相続プロセスに革命を起こすために情熱を持っている」と宣言している。
また、「現実世界において、デジタル資産を相続人(遺産を受け取る人)に移管するための口座を提供する」とも述べている。

人間の運命をブロックチェーン技術でサポート?

「人間は長期的には皆死ぬ」
これは「雇用・利子および貨幣の一般理論」で、「政府がビンにコインを入れて、穴を掘って埋めるだけでも景気刺激策になる」という理論を述べ、経済学の世界に革命を起こしたと言われるイギリスの経済学者ジョン・メナード・ケインズの言葉だ。
APNIKAのウェブサイトには、ケインズの名言に似た言葉が出てきており、「我々人間は傷つきやすく、死ぬ運命にある」と述べ、「その際、遺産や相続の問題が発生していることについて、多くの人はあまり注意を払わない傾向にある」と付け加えている。
この人間の運命について考えていたAPNIKAの最高技術責任者(CTO)が、APNIKAの共同創業者に考えを伝えたところ、この共同創業者に金融機関での経験があったこともあり、DigiPulseの構想が浮かび上がったと、APNIKAのウェブサイト上で説明されている。

仮想通貨が相続税の対象かどうか意見が分かれている?

国税庁のホームページによると、日本で相続税がかかる財産は以下のようになっている(2017年8月時点)。
・現金・預貯金・有価証券・宝石、土地、家屋など・貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの2016年5月に、改正銀行法(正式には、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」となる。
長い!)が日本の国会で成立し(施行は2017年)、この中で仮想通貨の定義が明文化されている。
しかしながら、仮想通貨については秘密鍵(パスワード)の問題などもあり、2017年8月時点で、相続時にどのような手続きになるのかについて不透明な部分があり、専門家の間でも意見が分かれている状態だ。

世界はもっと不透明?

日本は、主要国の中でいち早く仮想通貨や仮想通貨取引所に関する法整備を国レベルで進めている。
しかしながら、他の国では州単位で規制を始めているところはあっても、国単位で監督官庁などを明確にしているところはあまりないと言われている。
日本の場合、2014年に国内最大のビットコイン取引所だったマウントゴックスが経営破たんし、その原因が幹部による顧客資産の横領であったため、刑事事件となって新聞やテレビなどが騒ぎ出し、国が仮想通貨取引所の規制に乗り出すという歴史的な背景があった。
しかしながら、仮想通貨発祥の地であるアメリカやヨーロッパ諸国では、仮想通貨は法の縛りを受けないため様々なイノベーションを生んでいるという考えが強く、それによって色々な企業がICO(仮想通貨による資金調達)を実施しているという背景がある。

日本は資産を隠せない社会になった?

日本ではマイナンバー(個人番号)が導入されており、金融機関を通じた資金移動は当局の追跡から逃れられないようになっている。
クレジットカードや電子マネーがこれだけ普及している時代でありながらも、銀行の貸し金庫サービスが盛況で、自宅や事務所などで使う金庫の売れ行きが最近になって伸びているのは、資産がどこにあるかを当局に知られたくない人が増えているからという指摘もある。
日本から海外に米ドルやユーロなどを送金しようとすると、一定金額以上の場合は政府に報告を行うことになっており、日本は資産を隠せない社会になりつつある。
そんな中、ブロックチェーン技術を用いた仮想通貨は匿名性が担保されており、どこに送金しようが当人以外分からないというメリットがあり、資産継承手段として利用しようとする人が出てきても、まったく不思議ではない。
APNIKAがラトビアにある理由富裕層の資産管理を行うプライベート・バンキングがスイスで発達したことは知られているが、その背景には、スイスで相続税が廃止されているということがあると言われている。
相続税がない国や地域は結構あり、主要なところではシンガポールやオーストラリア、ニュージーランド、タイなどだ。
日本のお金持ちがこれらの国に永住するパターンを時々耳にするが、相続税がないことも理由の一つであると考えられている。
仮想通貨の相続サービスを行うAPNIKAが、ラトビアにある理由はもうお分かりだろう。
そう、ラトビアにも相続税がないのである。

どうやって資産を移転するのか?

APNIKAのウェブサイト上に掲載されているホワイトペーパーの中で、仮想通貨DigiPulseを使った資産移転手続きに関する説明がなされている。
DigiPulseの利用者は、資産を移転する相手(相続人)をあらかじめ登録しておき、一定期間口座が動いていない場合などの条件を決めておき、その条件が発動したら資産が移転する仕組みになるようだ。

APNIKAは、2017年8月時点でDigiPulseのICOを実施しており、2017年第4四半期中にサービスを開始すべく準備を行っている。
DigiPulseは仮想通貨の相続続きを支援するためのサービスであるが、日本を含め各国の相続に関する法規制が異なるため、今後どのような運営がなされるかは不透明な部分がある。
APNIKAはホワイトペーパーの2ページ目で、「将来世代のためのスタンダードを目指す」と述べているが、政府がスタンダードを変更するリスクはあると考えておいた方が良いだろう。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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