【Publica】読み終わった電子書籍を売れるサービスが開始

本の価格はなぜ下がらないのか

海外に行くと、本の安売りをしている国があったりする。1つの街にある2つの本屋で同じ本が違う価格で販売されていたりして、日本の書店とは大きな違いがある。
日本の場合、本は基本的に全国どこの店舗に行っても同じ価格で販売されている。

その理由は、再販売価格維持(以下、「再販」)制度である。日本では出版物について再販制度が認められており、出版社が本屋などの小売店に対して、本や雑誌などの出版物を定価で販売させることが認められているのだ。

日本には独占禁止法があり、再販行為は原則として禁じられている。資本主義国である日本において、メーカーなどが小売店に対して定価で商品を販売させてしまうと需要と供給のバランスが崩れてしまい、価格が正常に調整されなくなってしまう可能性があるためだ。

しかしながら、本やCD、タバコなどについては再販行為が例外的に認められており、これらの商品について、安売りを行っている店を探すことは日本では不可能に近い。また、日本では売れ残った出版物を返品できる制度も導入されている。

出版物に再販行為が認められている背景に、「本は文化水準を維持するための重要な資産」という崇高な考えがあるようだ。

しかしながら、これらは出版業界と本屋を守るための都合のよい理屈ともとらえることができ、高い書籍代を負担させられる消費者にとって、再販制度がよい制度であるかどうかは意見が分かれるところだろう。

ここまで出版業界の状況について説明してきたが、皆様が予想している通り、今回紹介するICO企業は出版関係のサービスを提供しようとしている。
その会社の名は、「Publica」である。

電子書籍でも利益は半分以下

Publicaは現在の出版業界について、

「紙の出版にこだわっている時代遅れの業界であり、15世紀にグーテンベルグが活版印刷術を発明した時代から進化していない」

と宣伝動画でこき下ろしている。

また、紙の本を出版するためには出版社や卸業者、本屋などの仲介者が必要になり、それによって作家が手にすることができるのは、売り上げのわずか10パーセントから15パーセントに限られてしまうとPublicaは指摘している。

最近ではAmazonなどのオンライン流通網を使い、電子書籍を販売するという方法もある。
ただ、電子書籍であっても売り上げの半分は流通業者に持って行かれてしまい、マーケティングは作家自らが行わなければならないため、結局は非効率になってしまうとPublicaは説明している。

さらに、電子書籍を作ろうとしても、校正や編集、イラスト作成などを作家一人ですべて行うのは現実的でないとPublicaは述べている。そこで頼りになるのが、Publicaのプラットフォームというわけだ。

出版作業はプロジェクト管理

Publicaのホワイトペーパー5ページ目に、興味深い内容が示されている。

「本の出版はプロジェクト管理であり、チームワークでの作業が必要とされる。」

本の出版に限らないが、多くの仕事はたくさんの人の力を必要とするチームワーク作業である。本の場合、作家が校正、編集、イラスト作成をする人たちと綿密にコミュニケーションを取りながら手続きを進める必要があり、Publicaの言う通りプロジェクト管理が重要になるのだろう。

従来は出版業界の専門家が行っていた校正や編集、イラスト作成などの作業を、Publicaのスマートコントラクト・プラットフォームを活用することで、すべての手続きについてオンライン処理が可能になると述べている。

2018年1月から出版作業が可能

Publicaは2017年10月25日から11月15日までICOを実施する予定にしており、仮想通貨であるPBLトークンを発行して1億米ドルの資金調達を目指している。
この記事を執筆している10月6日時点で1米ドル=113円程度であるため、Publicaは113億円の調達を目標にしていることになる。

113億円の目標調達額は、ICO企業としてかなり大きめのように見える。
しかしながら、Publicaはウェブサイト上で「本を作るためには長い時間が必要であり、出版業界として考えるとそれほど大きな目標調達額ではない」と説明している。

また、2018年1月からPublicaのプラットフォーム利用が可能になるとウェブサイト上で説明している。2017年9月5日にPublicaのビジネスに関する発表が行われたとウェブサイトで述べており、そこからわずか4カ月で出版作業が開始されることになる。

Publicaはスマートコントラクトを採用しているため、仲介者を経ることなく、すべてオンライン上で自動契約が執行される仕組みになっている。
ただ、出版の校正や編集、イラスト作業などはかなり専門性の高い仕事のように思われる。

既存の出版社に勤めている現役の校正担当者や編集者、イラストレーターなどをPublicaのプラットフォームに呼び寄せるのはかなり難しそうだ。そのため、おそらくはフリーランスや自営で働いている人たちなどをPublicaのプラットフォームに招き入れるのだろう。

日本でも多くのフリーランスの人たちが、クラウド・ソーシング経由で仕事をしており、クライアントからよい評価を受ければ報酬が上がり、さらによい仕事が回ってくる仕組みになっている。

Publicaで出版作業をサポートする人たちも、クラウド・ソーシングで働く場合と同じようにクライアントから依頼を受けて働き、評価が高ければまた仕事が来るというサイクルになるのだろう。

読み終わった電子書籍が売れるようになる

電子書籍が日本でも普及し始めているが、紙の本は健在であり、本屋も図書館もまだ消滅していない。
アマゾンなどのオンライン流通網が整備されたことにより、本屋は減少しているが、都心部では大型書店が残っており、平日の昼間でも結構人が入っていたりする。

紙の本がなくならない理由の一つとして、「積ん読(つんどく)」があると言われている。積ん読とは、本を買って読まずに積んでおくことだ。自分が本を買っていることを人に見せるための行動であり、実際には読んでおらず本の内容が身に付いているわけではない。

ただ、積ん読の行為は海外でも見られるようで、アメリカでも「本棚に入れておいて、読むためではなく人に見せるために本を買う人が一定数いる」と言われている。これは日本の積ん読と同じであり、アメリカでも「自分は本を読んでいる」というアピールをする習慣があるようだ。

電子書籍の場合、積ん読ができないことに加えて、読んだ本を売ったりすることが難しいという難点があった。Publicaであれば、読み終わった本を売ることができるようになるとウェブサイト上で説明している。

Publicaはウェブサイト上の「よくある質問」部分で、PBLトークンが「ShapeShift」という仮想通貨取引所で主要な仮想通貨と交換可能になる予定であると説明している。将来的には、PBLトークンが法定通貨と換金できるようにすると述べているが、具体的な期日が記載されていないため、いつ実現されるかは未定のようだ。

「15世紀から進化していない」と現在の出版業界を痛烈に非難しているPublicaが、どのような形で本の姿を変えていってくれるか今後の動きから目が離せない。

Publica の ICOカレンダーは→こちら

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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