シンガポール政府が仮想通貨関連法案を協議

日本に注目する世界の仮想通貨業界

私は仮想通貨評論家コインマンとして活動しているが、最近になってヨーロッパやアジアのICO企業から問い合わせを受けることが増えている。

2017年11月10日、東京のある超高層ビルで開催された仮想通貨関連のイベントに参加したのだが、関係者しか入れないところに招待され、海外のICO企業経営者と意見交換をする機会にも恵まれた。

私が自分のことを「仮想通貨評論家コインマン」と紹介すると、多くのICO企業社長が関心を示し、「日本でビジネスを拡大したいのだが、アドバイスをくれないか?」とか「今度ICOをするのだが、日本の投資家にマーケティングする方法を教えてくれ」などの話があり、その後、実際に仕事が始まった取引先もある。

日本で日本語だけを使って生活をしていると、世界の仮想通貨業界が日本に注目していることをあまり感じることはないが、イベントなどに参加して海外のICO企業経営者と話をすると、日本に対する期待の高さを感じることができる。

私の場合、香港の会社とも取引があるため、アジア系の情報はちょくちょく入ってくるのだが、ヨーロッパ系の仮想通貨企業とはこれまで連絡することがほとんどなかった。

ヨーロッパでも仮想通貨に対する規制が議論されており、国レベルで法整備が行われているのが現時点では日本しかないこともあって、最近になって私のところにイギリスやオランダからメールがやってくるようになっている。

ただ、以前も書いたと思うが、日本は英語が通じにくい社会という問題があって、ヨーロッパやアジアのICO企業経営者が、日本に本拠地を置くのをためらっているのである。

日本の最大のライバルはシンガポール

11月10日に私が参加した仮想通貨関連イベントで、ヨーロッパのあるICO企業からウェブサイトとホワイトペーパーの和訳作業の依頼を頂いたのだが、その会社はロンドンに本社を構えながら、シンガポールにも拠点を持っていた。

そのICO企業の社長になぜシンガポールに拠点を構えているのかを確認すると、「英語が通じること、資金調達がしやすいこと、行政手続きがスムーズであること」の3つを理由としてあげていた。

表現の自由が制限されていることや住宅価格が上がりすぎていることなど、問題もあるとされるシンガポールだが、海外の起業がビジネスをする上では非常にやりやすい場所なのである。

一方、金融庁による仮想通貨取引所の登録制度が始まるなど、政官財で仮想通貨取引を盛り上げようとしている日本だが、「英語が通じない」ことと「法規制が複雑」という問題があって、ICO企業が日本に本拠地を置く動きはあまり見られない。

ヨーロッパやアメリカのICO企業がアジアに拠点を置く場合、最初の候補になるのはやはりシンガポールなのである。

そのシンガポールで、仮想通貨取引の法規制に関する議論が行われており、11月21日にその概要がシンガポール金融当局のウェブサイト上で公表された。

シンガポール金融当局の発表内容

シンガポールの金融当局が発表した仮想通貨取引に関する法規制の議論は、今後の立法化に向けての下準備であると考えられている。

こちらのサイト「bit-life(ビットライフ)」でも、シンガポールに本拠地を持つICO企業をいくつか紹介してきたが、現状では仮想通貨取引を直接規制する法律がシンガポールには存在していない。

そのため、ICOなどの仮想通貨取引で問題が発覚したら、適宜検査や調査を行うというのがシンガポール金融当局の行政方針のようにである。

仮想通貨に関する法規制が存在していない状態は、シンガポール政府にとっても、シンガポールでビジネスを行っているICO企業などにとっても好ましくないという考えがあるようで、金融当局が議論を推進し始めた状況だ。

11月21日にシンガポールの金融当局がウェブサイトで発表した主な内容は、以下の通りである。

1.仮想通貨取引の拡大に沿って、シンガポール政府は「決済サービス法」の制定を検討しており、イノベーションを推進しつつ、リスクを抑えるためにさまざまな議論を行う。

2.2016年にシンガポール金融当局は、決済を規制する枠組みに関して一般公衆からフィードバックを受け、それに呼応した形で決済サービス法の検討を行っている。

3.決済サービス法が施行された場合、決済業者は1つの免許を取得し、1つの行政機関から監督を受け、あらゆる決済業務を行うことが可能になる予定である。免許が必要になるのは、個人や法人の決済に関わるサービスを行う業者に限られる。

4.決済サービス法の規制が厄介なものにならないよう、金融当局に提出が必要なものなどは明確に定義する予定である。

5.決済サービス法の施行によって、シンガポール金融当局はマネーロンダリングやテロリズムを事前に予防し、個人や法人に所属している資金を保護しながらシステム事故のリスクを軽減して、相互運用性を高めながら、幅広い決済サービスに対応できる態勢を構築する予定である。

6.インターネット経由の決済ソリューションの進化に対応すべく、前向きな行政の枠組みを構築していく。決済サービスのリスクを最小化しつつ、適切な規模で規制措置を取り、個人や法人の利便性を高め、イノベーションを推進するためのサポートを行う。

7.2017年11月21日から2018年1月8日まで、一般大衆とのコンサルテーションを行う予定である。決済サービスを行っている業者からフィードバックを受ける機会を作り、利用者を保護する方策を検討していく予定である。

上記項目7で記載されている「一般大衆とのコンサルテーション」とは、日本で言うところのパブリック・コメント募集のことだろう。

シンガポールで法規制が整備されれば日本はピンチ

シンガポールの金融当局は2018年1月までパブリック・コメントを受け付け、一般公衆からの意見を聞きつつ、決済サービス法の立法化に向けて本格的に動き出すようである。

シンガポールの金融機関経営者は、アメリカの大手銀行の最高経営責任者などと同様に、ビットコインなどの仮想通貨取引に対して批判的な態度を取っている。

既存の銀行などにとって、ビットコインやアルトコインによる決済拡大はビジネスを失うことにつながりかねず、シンガポール最大の銀行経営者は、ビットコインを「ネズミ講」呼ばわりするなど敵対意識をむき出しにしている。

ただ、シンガポール政府からすると、日本で仮想通通貨取引所の登録制度が始まり、改正資金決済法が2017年から施行されたことによって、東京を中心に仮想通貨取引が拡大していることから、シンガポールも指をくわえて見ているわけにはいかないという気持ちが高まっているのだろう。

今回シンガポールの金融当局が発表した内容を見る限りにおいては、仮想通貨を使って決済サービスを行う業者に免許取得を義務づける方向で立法化を検討するようである。

ここでの「決済サービスを行う業者」が、仮想通貨取引所だけを指すのか、もっと広く仮想通貨取引を提供するサービス業者まで含まれるのかは不明である

ただ、何らかの法規制によって、シンガポール金融当局がマネーロンダリングやテロリズムを仮想通貨取引から排除し、イノベーションを推進していこうとしているのは確かである。

シンガポール政府の動きから目を離せない状態が、来年以降も続きそうである。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする