【ZEUS】仮想通貨はゴミ問題も解決できる?

江戸にはゴミがなかった?

海外に住んでみて気づくことの一つに、ゴミの分別方法の違いがある。アメリカの場合、基本的に分別を行わない地域が多く、何でもかんでも大きなダストボックスにゴミを入れる習慣がある。

日本は世界でもまれに見るゴミ分別先進国であり、ありとあらゆるゴミを分けなければならない。

「ここまで分別する必要があるのだろうか?」と感じるくらい細かい地域もあり、ゴミ収集車が運んだ後、どのような処理が行われているか詳細を知っている人は少ないだろう。

物質社会に住んでいる現代の我々からすると信じがたいことだが、ほんの150年前の江戸時代には、ゴミというものがあまりなかったと言われている。

「江戸にはほとんどゴミがなかった」と解説しているのは、「江戸の銭勘定(山本博文、洋泉社)」である。

江戸時代は鎖国によって原則として貿易が行われなかったため(長崎の出島を除く)、物資不足であらゆるものが再利用されており、当時は世界最大の人口を持っていた都市である江戸でもゴミが発生しなかったという。

同じころ、フランスでは汚物を家の窓から捨てることが一般的で、街にはあらゆるものが落ちていたと言われている。

現代の東京でも、道にゴミはあまり落ちていない。一方、フランスのパリを散歩するといろいろなものが落ちており、常に下を向きながら移動する必要がある。

江戸時代から150年近く経過しているが、街の衛生度という点では大きく変わっていないと言えるかもしれない。

「江戸の銭勘定」には、ゴミのこと以外にも色々なことが書かれていて、非常に勉強になる。

江戸時代初期までは朝と夜の一日二食であったのが三食に変わった背景など、さまざまなことが分かりやすく解説されている。

1657年に江戸で大火事があり、街を復興させるために全国各地から労働者が集まって、力仕事を一日中続けるために昼食が出されたことによって、日本で一日三食が一般的になったそうである。

また、一日三食が広まり始めたころ、江戸で外食文化が始まったことも説明されている。現在の浅草の雷門前に、「奈良茶飯(ならちゃめし)」という一膳飯屋が1600年代後半にでき始め、それが江戸での最初の料理屋だったそうだ。

話が少しそれてしまったが、今回のテーマはゴミである。ゴミがほとんど出なかった江戸と比較して、現在は「ゴミできらめく世界」が広がっており、各国がゴミを減らすために様々な方策を打っている。

しかしながら、特効薬はなく、このまま行くと、世界中がゴミで埋め尽くされる日がいつか来るかもしれない。

そんな状況を打開しようと立ち上がったICO企業が、ウクライナに現れた。その会社の名は、「ZEUS」である。

1人年間300キロ以上のゴミを出している

ZEUSは2017年12月15日から2018年1月25日までICOを実施して、仮想通貨であるZEUSトークンを発行する予定にしている。

ZEUSのウェブサイトによると、人間は1人年間300キロ以上のゴミを出しているという。また、ゴミが埋められた場所の土は、50年から100年毒性の状態が続くとも指摘している。

ZEUSが作ろうとしているのは、「ZEUSエコ・クリプト・マイニング」というプラットフォームであり、これが完成すれば、ゴミや廃棄物から電力を生むことが可能になるという。

ZEUSエコ・クリプト・マイニングで作られた電力を使って、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨をマイニングし、収益を上げていくビジネスモデルのようだ。ZEUSのビジネスモデルを一言で表現すると、「怪しい」となるだろう。

新しい仕組みで電力を創出してマイニングをしようとしているICO企業は、「HydroMiner」など他にも存在しているが、ゴミ問題まで解決するのはかなり難しいと言わざるを得ないだろう。

ZEUSは2018年1月から2月にかけて、ドイツの土地を買うか借りる予定であるとホワイトペーパー上で説明している。

2018年3月から8月の間に工場を建設して、マイニングが行える態勢を整えるとも述べている。

その上で、2018年11月から12月にゴミをリサイクルしながら電力を作り出し、主要仮想通貨のマイニングを始める予定になっている。

壮大なプロジェクトを8人で運営

ZEUSは人類が抱えているゴミ問題を解決し、電力まで作り出してビットコインやイーサリアムなどをマイニングするという壮大なプロジェクトを実行しようとしている。

世界的な大企業でもなかなか難しそうな夢のようなプロジェクトであるが、ZEUSはたった8人で運営するとしている。

ZEUSが、2018年3月から8月にかけて行う予定になっているゴミのリサイクル工場建設だけでもかなりの労力が必要になるはずだ。

その後、マイニングを行うための機材を用意し、電力を生産しながら問題なく稼働させるためにはかなりのノウハウも必要になってくるだろう。

しかしながら、ZEUSの「8人の侍(?)」のうち、最高経営責任者(CEO)であるAlexander Pilipenko氏を除き、ゴミ・ビジネスの経験者がいないようだ。

スタートアップのICO企業であるため、人材不足は致し方ないのだろうが、重厚長大産業であるゴミ・ビジネスに入っていくにはあまりにも人手不足のような気がする。

流動性リスクがかなり高い

また、ZEUSが発行する仮想通貨であるZEUSトークンは、ICO後に仮想通貨取引所で法定通貨や主要仮想通貨に換金、交換できるかどうかが不明であり、流動性の記載がウェブサイトにもホワイトペーパーにも見当たらない。

流動性について言及していないICO企業であっても、ベンチャー・キャピタルや事業会社などが出資し、取締役などを送り込んでいる場合であれば、何らかのチェックがなされる可能性がある。

外部からの投資家はICO企業に利益を出してもらわなければならず、発行した仮想通貨が取引所で流通しないまま長い間放置されてしまうと、流動性がない仮想通貨を抱え込むことになるためだ。

ZEUSの場合、外部からの投資家は特にいないようで、基本的にICOだけで資金調達を行う予定のようだ。

ドイツの土地を買うにしても借りるにしても、工場建設には莫大な費用が必要になり、ICOで必要な資金を集められない場合、一気に資金がショートする可能性があり、流動性リスクがかなり高くなることが予想される。

グリーン・パラドックスを解消できるのか?

私は以前、フランスに住んでいたのだが、国境を接しているドイツにも旅行に行ったことがある。

知り合いのドイツ人の家に宿泊させてもらったのだが、ドイツは再生可能エネルギーに力を入れていることもあって、かなり電気代が高いとその友人がぼやいていたのを覚えている。

ご存知の通り、フランスは原子力発電が盛んな国であり、電気代がヨーロッパの中でもかなり安かった。

ドイツでは新しい原子力発電所を作ることが難しいため、ドイツと国境を接しているフランスの領地に原子力発電所ができ、そこからドイツに電力を輸出するというグリーン・パラドックスという問題が指摘されていた。

ZEUSはゴミをリサイクルしながら発電する電力で仮想通貨をマイニングし、このグリーン・パラドックス問題を解消できるかは不明だが、今後の行方に要注目である。

コインマン
日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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