【DLS Academy】ブロックチェーンで大学が要らなくなる?

ブロックチェーン企業によって、個人がメディアを持てる時代?

私が大学を卒業したのは就職氷河期と呼ばれた2000年であり、仕事が見つからない同級生の中には就職浪人という選択をする人が何人かいた。就職浪人とは単位を意図的に残して卒業をせず、大学に籍を残したまま一年間就職活動を続ける人のことを指す。

最近は日本の雇用環境が改善しており、就職浪人という言葉自体をあまり聞かなくなったが、私が大学生のころは結構耳にしていた単語だった。就職浪人をするからといって、一年分の学費が免除されるわけでも減額されるわけでもないため、お金を工面するためにみんな苦労していたことを覚えている。

大学卒業から数年以内の人は新卒扱いにする企業が増加しており、近頃は就職のために無理をして大学に残っておく必要性が薄れている。さらに、文系の大学に行って講義形式の授業を聴講することと、YouTubeなどで動画を視聴することの違いがなくなっているため、大学に行く意味がなくなっていると主張する識者も登場している。

日本の場合、昔から「オタク」と呼ばれる特定の分野におけるマニアが存在しており、彼ら、彼女らの情報収集力と専門性は驚くべきものがある。オタクに対する評価は、国内よりも海外の方が高いケースがあるくらいであり、YouTuberとして生計を立てている人の中にも、オタク的要素を存分に発揮しているパターンがある。

インターネットが普及した現代は、「個人がメディアを持てる時代」であると言われる。従来であれば、陽の目を見ることがなかったオタクのマニアックな知識が、YouTubeなどで世界中に拡散され、それを伝えることで生活していくことができるようになったわけだ。

かくいう私も、「個人がメディアを持てる時代」の恩恵を受けている一人だろう。10年前に、「仮想通貨評論家コインマン」として活動をしようと思っても難しかったに違いない。新聞や雑誌などに投稿をしようとしても、門前払いされるだけだっただろうし、金融と英語という専門性を活かしながら、この仕事をさせて頂いていることは非常に幸運であると考えている。

世界にはマニアックな能力を持っている人が数多くいるが、発信する場やインフラストラクチャーがないため、やりたくない仕事をしているケースが結構あると思われる。そのような問題意識を背景に、オタクやマニアが専門知識を披露して、収入を得るためのプラットフォームを提供するブロックチェーン企業がニュージーランドで登場した。その会社の名は、「DLS Academy.io」である。

スマートコントラクトの仕組みを活用、仲介者のいない学校をつくる?

DLS Academy.ioは、中央管理者がいないスマートコントラクトの仕組みを活用し、教える側と学習者がコミュニケーションを自発的に行うプラットフォームを構築しようとしている。

DLS Academy.ioがやろうとしていることを一言で表現すると、「仲介者のいない学校」のようなイメージだろう。日本の場合、文部科学省が監督官庁となり、学校教育を司る仕組みになっている。

国公立だけではなく、私立の大学なども助成金を政府から受け取っており、許認可権も相まって、良い意味でも悪い意味でも、日本の学校は政府の影響を受けざるをえない。「政府に近づけば近づくほど、ビジネスは非効率になる」と言われるが、規制産業である教育業界は、非効率な部分があちこちに見え隠れしている。

最近は、区立や市立の図書館でも無料Wifiを使えるところが多くなっている。しかしながら、日本では私立の有名大学であっても、図書館内でWifiを利用するために色々な手続きをしなければならないケースがある。

海外の有力大学の場合、キャンパス全体で無料Wifiが使えるところがあり、日本の大学は完全に国際競争から取り残されている。そんな中、高校卒業後、海外の大学に進学する日本人が出てきており、さまざまな意味で教育業界に市場原理が働き出している状況と言える。

ただ、ブロックチェーンの登場によって、高い能力と専門性を持った人から直接教育を受ける仕組みが構築されようとしている。DLS Academy.ioは、「仲介者のいない学校」をつくろうとしており、インターネットにつながっているパソコンやスマートフォンがあれば、いつでもどこでも学ぶことが可能になる。

ブロックチェーンによって誰でも先生になれる?

規制産業である教育ビジネスの場合、学生を指導する教員は免許が必要になっている。免許制であるため、とんでもない人が教員になることはないと考えている人がいるかもしれないが、昨今は教育関係者の不祥事が相次いでいる。

度重なる不祥事は免許制が完璧ではないことを示しており、DLS Academy.ioは市場原理に基づいて、誰でも先生になれるプラットフォームを構築する予定である。プログラミングや料理、写真など、あらゆる分野について教育の場が設けられる予定になっている。

「誰でも先生になれるのであれば、とんでもない指導をする人が出てくるのではないか」という懸念を持つ人がいるかもしれない。この懸念はその通りであるが、とんでもない指導をした人には利用者から厳しい評価が下されることになり、リピーターが付かないため、DLS Academy.ioでは長く教員を続けられなくなる。

自家用車をシェアリングし、移動手段として提供するプラットフォームであるUberが世界中で拡大しているのは、良いサービスを行った人が評価され、リピーターが付くというシンプルな仕組みを実践しているためだ。

日本の場合、タクシーの台数は国土交通省によって規制されているが、タバコの臭いがするタクシーがあったり、道をよく知らないドライバーに遭遇するケースがある。Uberの場合、低品質なサービスを提供しているドライバーは淘汰されるため、政府による規制よりも効率的な部分がある。DLS Academy.ioは、教育業界のUber的な存在を目指しているようである。

トークンを購入し、授業料を支払う

日本の場合、大学の学費は世界的に見ると、まだ安い方である。
アメリカやイギリスの場合、トップの私立大学になると年間500万円以上学費がかかってしまうケースが結構ある。

有名私立大学の場合、学生の両親の所得が一定額以下の場合、学費を免除したり、減額するなどの措置を取っているようだ。それでも、学費が高すぎて普通の家庭の子どもはトップクラスの私立大学に通えないような社会構造になりつつある。

DLS Academy.ioは、2017年9月15日から10月15日までの1カ月間ICO(仮想通貨による資金調達)を行っており、仮想通貨であるDLトークンを発行する予定である。

DLS Academy.ioのプラットフォームを使って学習する人は、DLトークンを購入し、教えてくれる人に支払いを行うことが基本的な仕組みになる。DLS Academy.ioの興味深いところは、教える側が金額を設定するところである。

人気のある教員は授業料を高く設定しても生徒が付いてくることになり、究極の資本主義の中で教育が行われることになる。DLS Academy.ioで教育を受けた人が、既存の大学や大学院を卒業した人たちと実社会で競争し、優位性が出てくるようになれば、DLS Academy.ioが発行する仮想通貨であるDLトークンの価格が上昇していくだろう。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。