【Micromoney】スマホ経由の金融サービスが貧困を救う

金融サービスはタダではない

日本は、銀行口座を無料で簡単に開設できる世界的に見ても珍しい国である。当たり前のように使っている銀行口座であるが、先進国であっても日本のように誰でも無料で使える社会はあまりないのである。

私はニューヨークとパリで生活していたため、アメリカとフランスの金融機関で口座を開設し、それぞれに大きな違いがあった。日本の銀行口座ともさまざまな相違点があって、驚いたものだ。

ニューヨークには仕事で行き、職場が金融機関だったこともあり、自分が所属しているグループの銀行で口座を開設した。

私がニューヨークにいたのは2002年から2003年までの2年間だが、当時は8,000米ドル以上を預けなければ、口座維持手数料を毎月20米ドル程度支払わなければならなかった。

また、アメリカではいまだに小切手のやり取りが行われているが、預金残高が8,000米ドル未満になってしまうと、小切手の利用にも手数料が発生する仕組みになっていた。

私の場合、「スタッフ向け優遇」と呼ばれる従業員向けの特典プログラムを使っていたため、8,000米ドル未満の預金残高でも口座維持手数料や小切手発行手数料を取られることなく生活することができていた。

この記事を執筆しているのは2017年11月17日で1米ドル=112円程度であるため、8,000米ドルと言うとおよそ90万円である。

貯蓄文化のある日本では90万円程度の預貯金を持っている人は多いと思うが、消費文化が強いアメリカでは、銀行口座に8,000米ドルある人はそんなにたくさんいるわけではないのだ。

一方、パリで生活をしていた時は大学院生であり、学校の近くにあった銀行に口座開設をしにいった。最初に銀行に行くと、「アポイントメンとを取れ」と言われて、翌日13時に再び足を運んだことが「フランスらしい」と感じたものである。

日本ではあまり知られていないことであるが、フランスはかなりの学歴社会である。グランゼコールと呼ばれる大学院大学を卒業すると、一般的な大学卒業者とは初任給に大きな差が生まれ、その後の昇進、昇給なども変わってくる。

私の留学先がたまたまグランゼコールであり、銀行で口座開設をする際、フランスの学歴社会の実情を垣間見る機会があった。担当してくれた銀行員が口座開設手続きを終えて、こう語ったのをいまだによく覚えている。

「コインマンさん(私のことね)、あなたはグランゼコールの学生であり、卒業後、ビジネスで成功して、高い収入を得る可能性が高い。なので、口座維持手数料や小切手利用手数料などはずっと無料です。頑張って良い仕事について、いっぱい稼いで、うちの銀行にたくさん預けて下さいね!」

フランスが学歴社会であることは聞いていたが、実際に身を持って体験したのはこの時が初めてだった。

私がグランゼコールの学生でなければ、口座維持手数料や小切手発行手数料などが発生していたわけだが、グランゼコールに通っているという理由だけで、それらを免除してくれるというわけだ。

アメリカとフランスの銀行を実際に使ってみて感じたことは、「金融サービスはタダではない」ということである。

ニューヨークにいた時は職場が金融機関であり、パリにいた時はグランゼコールの学生だったという理由で、私は口座維持手数料などを免除されたわけである。

しかしながら、これらの立場がなければ、毎月一定の金額を銀行に支払わなければ金融サービスを使うことはできなかったのである。

アメリカやフランスのような先進国であっても、貧困層の中には口座維持手数料が払えないことから、銀行口座を持てない人がいる。

銀行口座を持つことができず、金融サービスにアクセスできない人たちは「アンバンク(Unbanked)」と呼ばれており、貧富の差を固定する要因になっていると考えられており、特に発展途上国において解決すべき大きな課題になっている。

銀行はないけどスマホはある

アメリカやフランスような先進国でも銀行口座を持てない人がいる中、発展途上国におけるアンバンク問題は深刻である。

自国で仕事があまりない発展途上国の場合、先進国などに出稼ぎに行って外貨を稼ごうとする人たちがいる。

先進国で仕事をすることで収入を得て、余ったお金を自国に送金しようとするのだが、現地の家族がアンバンクであり、金融サービスにアクセスできないためにお金を受け取る手段がないという現実がある。

発展途上国の地方都市などに行くと銀行の支店が存在しておらず、口座を開設するための手段がそもそも存在していないケースがあるのだ。

一方で、銀行の支店が近くにない発展途上国の田舎に住んでいる場合であっても、スマホを持っている人たちは結構いたりする。

ここに目をつけたICO企業がシンガポールに登場した。その会社の名は、「Micromoney」である。

15分で融資審査が完了する

Micromoneyは2017年10月17日から11月17日までICOを実施しており、1,500万米ドルを調達する予定にしている。

Micromoneyは、銀行口座を持っていないアンバンクの人たち向けに金融サービスを提供し、貧困からの脱出をサポートするためのプラットフォームを提供するとしている。

アンバンクの人たちが抱えている問題の1つに、信用情報の欠如がある。日本でもそうであるが、住宅ローンなどを借りる場合、金融機関は信用情報機関で申し込み者の信用情報を照会し、破産歴がないかどうかのチェックを行う。

アンバンクの人たちは銀行口座を持っていないため、信用情報が構築されておらず、融資を受けるための確認を銀行などができないという事情がある。

アンバンクの場合、銀行口座がないために、そもそも融資自体が難しいのであるが、信用情報がないという事実はアンバンクの問題をさらに深刻化させているのだ。

今回紹介するMicromoneyの場合、伝統的な信用情報機関は利用せず、ビッグデータを活用しながら申し込み者のSNS履歴などを独自にスコアリングして、融資審査を15分で完了する仕組みを提供している。

カンボジア、ミャンマー、タイで業務を開始済み

Micromoneyは既にカンボジア、ミャンマー、タイで業務を開始しており、ある程度の成功を収めているとウェブサイト上で説明している。

また、2017年第4四半期中にインドネシア、スリランカ、フィリピンでもビジネスを開始する予定である。

さらに、香港、ベトナム、中国、マレーシア、シンガポール、ナイジェリアでもビジネスを開始する準備が整っているとウェブサイト上で説明しており、香港やシンガポールなどの先進地域でも業務を行っていく予定になっている。

2020年第4四半期までに、Micromoneyの市場価値を10億米ドルにするために「最善を尽くす」とウェブサイト上で宣言しており、壮大な計画をロードマップに示し、ビジネスに対する本気度が感じられるICO企業である。

ホワイトペーパーを読んでいて面白いと感じたのは、大阪にある日本の会社がMicromoneyに投資していることだ。

日本の会社に加えて、海外のベンチャーキャピタルや事業会社もMicromoneyに出資しており、ICO前に相当額の投資を外部から受けているようである。Micromoneyの今後から目が離せない。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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