【Transmission】高すぎる海外送金手数料にサヨナラする日がやっと来た?

外資系金融機関に勤めていて良かったこと

私は外貨取引を得意とする外資系金融機関に長年勤めていたのだが、海外送金手数料が無料になったり、外国為替手数料割引を受けられるなどの社員特典があった。

米ドルやユーロなどの外貨をアメリカやフランスなどに送金する場合、通常は4,000円程度の送金手数料が必要だが、社員だった私は無料で海外へ送金できていたのである。
外資系金融機関に勤めていた時、海外駐在や海外留学をする機会があったが、海外送金手数料というものを支払ったことがなかった。
フランスに留学していた時は、頻繁にユーロを送金する必要があったため、この社員特典は非常にありがたかった。
現在は外資系金融機関を退職しているため、外貨送金をする機会も減り、海外旅行などで現地の通貨が必要になった場合は、クレジットカードを使ってキャッシングを行うことにしている。
これがもっとも合理的な外貨調達方法であり、空港などの両替所や銀行のキャッシュカードを使って、ATMで外貨を引き出すよりも経済的である。

既存の金融機関は変われない?

私の場合、日本という豊かな国にいるため銀行口座を無料で持つことができ、外貨の調達なども比較的簡単にできるが、世界には銀行口座を持てないアンバンクと呼ばれる人が多数いると言われている。
世界中に存在する70億人のうち、半分の35億人がアンバンク状態にあるという説もあり、銀行アクセスがないことによって、多くの人たちが貧困から抜け出しにくい状態になっているとも考えられている。
出稼ぎで発展途上国から先進国に出てきている人は多数いるが、自国の家族が銀行口座を持っていないため、仕送りができないというジレンマに悩まされているケースもある。
そんな状況を何とかしようと立ち上がったブロックチェーン企業もあるくらいで、既存の銀行システムは何かと使いにくく、いろいろな手数料や仲介料を取ろうする習性がある(以前の私もそうだったなぁー)。
先進国に生活しており普通に銀行口座を持てる人たちの間でも、金融機関が徴収する高い手数料や仲介料については以前から不満が大きく、改善が求められていた。
しかしながら、既存の金融機関は規制産業であり、多くの店舗と意味もなく高給取りの従業員、古いシステムというしがらみがあるため、抜本的な方向転換が難しい状態にある。
そんな既存の金融機関のビジネスモデルに業を煮やしたのかどうか分からないが、低コストで外貨送金を実現するためのプラットフォームを構築しようとするブロックチェーン企業が登場した。
その名は、「Transmission」である。
【Transmission】高すぎる海外送金手数料にサヨナラする日がやっと来た?

海外送金には約6パーセントのコストが発生している?

Transmissionの最高経営責任者であるMike Gorden氏は、2017年のグローバルな個人間決済は3兆米ドル(330兆円)になると予想している。
また、2017年6月に世界銀行が発表した資料によると、個人の海外送金取引には平均5.57パーセントのコストがかかっているそうだ。
アメリカに留学している子どもに1,000米ドル(約11万円)を日本から送金する場合、私が以前いた外資系金融機関であれば、まず外国為替手数料が1パーセント程度発生する。
1ドルにつき1円の外国為替手数料が必要であるから、1,000米ドルを購入するためには1,000円が必要になるわけだ。
その後、海外送金手数料として4,000円程度取られてしまうため、外国為替手数料の1,000円と合計して、1,000米ドルの送金のために約5,000円が必要になる。
実はこれで終わりではなく、送金を受けるアメリカ側の銀行でも、10米ドル(約1,100円)程度のリフティング・チャージと呼ばれる受け取り手数料が引かれることになる。
全て合わせると、11万円相当の米ドルを送金するために6,100円以上の手数料を金融機関に支払わなければならないことになる。
6,100円を11万円で割ると5.55パーセントになるため、世界銀行の言う外貨送金にかかるコストである5.57パーセントは元銀行員の私から見ても、相当実態に近い数値であると感じている。
Transmissionは、海外送金に必要なコストを1%以下に引き下げてサービスを提供する予定である。
Transmissionは銀行ではなく、銀行サービスを提供する企業でもないが、各国に銀行口座を保有し、法定通貨と仮想通貨の送金を低コストで便利に行うためのプラットフォームを構築しようとしている。

イーサリアムを中国元にして中国に送る処理も簡単?

2017年に入って仮想通貨全体の相場が上昇しており、2017年9月時点でイーサリアムは年初から40倍以上に急騰している。
イーサリアムをアメリカで保有している人が、中国に住んでいる人向けに中国元を送金したい場合、現在の仕組みであれば、まず仮想通貨取引所でイーサリアムを米ドルに換える必要がある。
その後、米ドルをアメリカの銀行に移し、それを中国元にして中国の銀行向けに送金処理をすることが一般的なプロセスだろう。
Transmissionは、アメリカにあるイーサリアムをそのまま送金処理し、中国の銀行に中国元で着金可能な仕組みを提供するとしている。
正確に言えば、Transmissionのプラットフォーム上でイーサリアムを米ドルに転換した上で中国元にしているのかもしれないが、仮想通貨を法定通貨にして海外送金を行う場合であっても、コストは1パーセント以下に抑えられる予定である。
Transmissionはホワイトペーパー(ICOを行う企業がウェブサイト上に掲載する事業計画書)の中で、「障壁の撤廃(removal of barriers)」が目標であると述べている。
既存の金融機関経由で外貨送金を行う場合、いろいろな障壁を突破する必要があり、それらの関所を通るための手数料として、さまざまなコストを利用者は負担させられてきた。

利用者は新しい口座が不要

Transmissionは2017年8月30日から9月8日の間でICOを実施しており、2018年からアジア、ヨーロッパ、北米でオフィスを開設する予定になっている。
日本円も取り扱い通貨に入っているため、Transmissionのプラットフォームを使い、1パーセント以下のコストで米ドルやユーロなどの外貨を送金したり、仮想通貨の決済も可能になる予定である。
Transmissionのアプリをスマートフォンにインストールするだけで、外貨や仮想通貨の決済サービスを受けることが可能であり、銀行や仮想通貨取引所に新しい口座を開設する必要がない。
この点は非常に便利であり、高いコストを払いながら、既存の金融機関で海外送金をしている人たちに受け入れられる余地はかなりあるだろう。

懸念はトラブルや事故が起こった時

前述した通りTransmissionは銀行ではなく、銀行サービスも提供しないため、各国で銀行免許などを申請する必要はないだろう。
ただ、利用者が送金したにもかかわらず、受取人が着金を確認できない場合などのトラブル時にどのような対応を取るかは懸念材料である。
法定通貨を取り扱う銀行の場合、送金情報が間違っている場合などでも対応できるノウハウが蓄積されているが、Transmissionで事故が発生した場合、どのような処置が取られるかは未知数だ。
銀行の場合、トラブルや事故は当局からの処分につながるため、迅速に処理を行うが、中央管理者がいないブロックチェーン企業であるTransmissionがトラブル時にどう対応するかは今後の注目ポイントだろう。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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