【AbjCoin】ナイジェリア初のICO企業は夢追い人

アフリカ向けの送金に苦しめられたコインマン

私は2002年、2003年にニューヨークの金融機関で働いていた。当時のアメリカでは、銀行と証券の垣根があまりなかったため、昼間は債券のブローカーとして働いて、夕方以降は銀行のオペレーション業務を行うという、今から考えるととんでもない状態で業務を行っていた。

銀行のオペレーション業務の一つとして、「エキゾチック・トランスファー」と呼ばれるものがあった。読んで字のごとく「特殊な送金」のことであり、アフリカや中東などのマニアックな銀行向けに、送金作業を行うという極めて地味な処理だった(ただ、とても大切な仕事である)。

2001年9月に同時多発テロ事件が発生して以来、アメリカから海外向けに銀行送金を行う場合、マネーロンダリング関連の確認作業が非常に面倒になった。

銀行のネットワークには、テロリストや反社会的勢力などの一覧が登録されている。そのため、登録されているテロリストなどに似ている名前を持つ送金受取人の場合、システムに入力をするとすぐにネットワークが作動し、「テロリストの可能性があるため確認が必要!」という警告がパソコンの画面に出てくる。

ほとんどの場合は人違いであり問題ないのだが、時々テロリストと同姓同名の人がいたりして、いろいろと大変だったことを覚えている。

アフリカの銀行に送金する際にもう一つ大変だったのは、とんでもなく長い名前の人がいることだった。私がアメリカで働いていた2000年代前半は、紙かファックスで送金者から依頼を受け、それを銀行員が目で見て手でシステム入力をし、承認者が確認の上でお金が送られる仕組みだった。

長い名前のアフリカの人が受取人の場合、下の名前と名字をシステムに長々と入力し、一言一句間違っていないか確認の上で承認に回すことになる。銀行名が長いアフリカの銀行もあったりして、エキゾチック・トランスファーには散々苦しめられた思い出がある。

ただ、そのおかげでパソコン上の数字の打ち込みが早くなり、キーボードを見なくても処理ができるようになった。最近は、ICO関連記事の準備として仮想通貨の価格を法定通貨建てで計算する作業があり、その際にブラインドタッチで数字の入力ができるのはとても役立っている。

「どんな仕事でも一生懸命やっておくと良いことがあるのだなあ」と思いながら、しみじみと秋の深まりを感じている今日この頃だ。

今回アフリカの銀行の話をしたのは他でもない。そう、今回紹介するICO企業がアフリカのナイジェリアにあるのだ。その名は、「AbjCoin」である。

ナイジェリア初のブロックチェーン企業

私は仮想通貨評論家としてICO関連の記事を執筆させて頂いているが、アフリカのブロックチェーン企業を目にするのは今回が初めてである。AbjCoinのウェブサイトを見るまであまり意識しなかったが、仮想通貨関連のニュースでもアフリカが登場することはほとんどなかった。

AbjCoinはホワイトペーパー(ICOを実施する企業がウェブサイトに掲載する事業計画書)の中で、「ナイジェリア初のブロックチェーン企業」であることを宣言している。また、ウェブサイト上では「アフリカの人々のために働くブロックチェーン企業」とも述べている。

ナイジェリア初のブロックチェーン企業であるため、AbjCoinはナイジェリアで最初に流通する仮想通貨であるとホワイトペーパー上で説明されている。AbjCoinはブロックチェーン技術を駆使して、「ナイジェリアの経済や金融システムに革命を起こしたい」と鼻息が荒い。

AbjCoinは2017年9月1日から10月30日までICOを実施しており、450万米ドルの調達を目指している。AbjCoinは、ホワイトペーパー上で今後の予定であるロードマップを示している。

2017年は、AbjCoinのシステム開発に注力するようだが、2018年、仮想通貨にとって最重要とも言えるイベントをAbjCoinは行う予定である。仮想通貨取引所におけるAbjCoinと法定通貨の交換開始である。

AbjCoinは、2018年中に3つの国際的な仮想通貨取引所で換金が可能になるとしている。この部分は、ICO企業にとって非常に重要なポイントである。具体的な期日を示し、特定の仮想通貨取引所で換金が可能になると明確にホワイトペーパー上で述べているICO企業は少ないのが実情である。

ホワイトペーパー上で存在する仮想通貨取引所を掲載しているため、AbjCoinはこれらの取引所と交渉に入っていると考えられる。実際にはこれから交渉するのかもしれないが、それでもAbjCoinの経営陣は流動性という仮想通貨にとって命とも言える課題に取り組もうとしており、この方針は評価できるだろう。

また、AbjCoinは2018年中に実際の店舗やインターネットショップでの支払いを可能にするため、世界中で流通網を整備するとも述べている。AbjCoinを使って決済を開始するための具体的な作業の記載がないのが気がかりであり、「2018年」という期日もかなりアバウトだ。

私は仮想通貨評論家であると同時にプロジェクト管理のコンサルティング業務も行っているのだが、コンサルタントとして言わせて頂くと、AbjCoinのプロジェクト管理は「不合格」である。

ビジネスの予定を外部に示す場合、少なくとも月単位で予定の表示を行う必要があり、「2018年X月に取引所で交換開始予定、2018年〇月に店舗での流通が可能になる予定」というようにAbjCoinは記載すべきなのだ。

年単位でプロジェクト管理を行っている企業の場合、計画に遅れが生じた場合、年単位で後ろにずれ込むケースがある。2018年に実施予定である仮想通貨取引所での交換が遅れる場合、2019年、2020年と年単位で後ろにずるずると下がっていくことが往々にしてある。その意味でも、プロジェクト管理は月単位で行う必要があるのだ。

2019年にはATMも登場?

AbjCoinはどこまでもアグレッシブなようで、2019年には金融機関のシステムと統合し、株式市場でも上場させ、AbjCoinのATMも登場させるとしている。夢を大きく持つのは良いのだが、実現可能性についてどこまで協議が行われているか微妙な計画だ。

また、ホワイトペーパーを見ていて興味深かったのは、AbjCoinの溢れ出る自信である。ホワイトペーパー12ページ目で、「AbjCoinの登場によって、ナイジェリアの法定通貨は他の通貨に対して上昇するだろう」とも述べており、本気で経済に革命を起こすつもりのようだ。

法定通貨に代わる決済手段としてAbjCoinはビジネスを展開する予定のようで、銀行業や輸出入関連サービスも手掛けていく予定であるとホワイトペーパー上で説明している。

ただ、AbjCoinのATMを作ったり、株式市場でAbjCoinを上場させる計画を述べているが、ナイジェリアの金融当局とどのような話し合いをしているかの記載がウェブサイトにもホワイトペーパーにも見当たらなかった。

この記事を執筆している10月4日の時点で、AbjCoinは22万米ドルを調達している(ウェブサイトに直近の調達額が掲載されている)。ICOは9月1日から10月30日までの予定であるため、ICO期間は現時点で半分以上過ぎたことになる。

AbjCoinは、ICOで450万米ドルの調達を目指しているが、このまま行くと10分の1の45万米ドルにも届かないペースである。ロードマップの実現可能性について、投資家はきちんと見ているようだ。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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