【Trackr】「前もって予測できないこと」を予測するブロックチェーンのアプリが誕生?

仮想通貨の価格をモンテカルロ・シミュレーションで予測?

統計学に詳しい人やビジネス・スクールに行ったことがある人であれば、モンテカルロ・シミュレーションの方法を学んだことがあるはずだ。横文字で難しく聞こえるかもしれないが、モンテカルロ・シミュレーションはモナコ公国にあるモンテカルロ区の地名に由来している。

モンテカルロはイタリア語であり、「シャルルの山」を意味している。「シャルル」とは、19世紀後半のモナコ大公だったシャルル3世を意味している。シャルル3世は在任中、禁止されていたカジノ運営を許可した。この政策によって、モナコは観光大国になったと言われている。

カジノと観光による収入が莫大なものになり、モナコの国民が税金を納める必要がなくなったのはシャルル3世の在任中であり、この功績から「モンテカルロ(シャルルの山)」という名が使われるようになった。モナコは世界で2番目の面積しかない小さな国だが、現在でも所得税がかからないタックス・ヘイブンとして知られている。

統計学で利用されるモンテカルロ・シミュレーションは、カジノがあるモンテカルロに由来があり、ルーレットなどの前もって予測できないことをシミュレーションすることから名付けられたと言われている。株式市場や外国為替市場などの未来を予測することはできないが、過去の動きに基づいてモンテカルロ・シミュレーションを利用し、シミュレーションすることは可能である。

金融機関のブローカーやトレーダーなどの中には、モンテカルロ・シミュレーションで市場の動きを読み解こうと必死になっている人がいるが、多くの場合、失敗に終わっている。モンテカルロ・シミュレーションを用いて過去の動きを参考にすることはできても、未来を予測することはできないからだ。

金融の世界で用いられているモンテカルロ・シミュレーションで、仮想通貨の動きを予想するためのアプリが誕生しようとしている。それを開発した会社の名は、「Trackr」である。

ありそうでなかった仮想通貨専用のシミュレーション・アプリ

投資家が保有している仮想通貨の資産状況を示すツールはこれまでにも提供されているが、Trackrは仮想通貨の将来の動きをテストし、シミュレーションする機能を持っている。Trackrが提供しようとしているシミュレーション機能によって、投資家は判断が下しやすくなるとTrackrのウェブサイト上で説明されている。

Trackrはありそうでなかった仮想通貨専用のシミュレーション・アプリであり、過去の価格を基に将来の値動きを予測するために開発されたシステムである。ありそうでなかったこのツールが開発された背景には、乱高下を続けている仮想通貨価格がある。

メディアの報道で乱高下する仮想通貨価格

Trackrのホワイトペーパー(ICO時にウェブサイトに掲載される事業計画書)を読むと、振り子のように動きが激しい仮想通貨価格を客観的に分析するツールが、ブロックチェーン業界には必要という想いが込められているようである。

仮想通貨価格がメディアの報道によって一時的に乱高下する傾向にあり、多くの投資家はメディアに振り回されているとTrackrは指摘している。

2014年に発生したマウントゴックス事件によって、ビットコインを含む仮想通貨やブロックチェーン全体が「怪しいもの」というイメージが日本で付いてしまったと言われている。マウントゴックス事件後、ビットコインの価格は低空飛行を続け、最高値を更新したのは2017年に入ってからである。

マウントゴックス以外の日本の仮想通貨取引所は、大きな問題を起こすことなく運営を続けていた。しかしながら、Trackrが言うようにメディアの報道によって仮想通貨の投資家は大きく動揺し、テレビなどはブロックチェーンの仕組みを説明するのではなく、「仮想通貨=怪しそうなもの」として取り扱っていたように感じる。

現在は仮想通貨評論家をしている私でさえ、2014年にマウントゴックス事件が発生した頃は、「仮想通貨は危ないものだ」というメディアのすり込み作戦の影響を受けていたくらいである。テレビの神通力は以前よりも下がっていると言われているが、高齢者を中心にテレビを視聴している人口は一定数存在しており、依然として影響力は甚大である。

シミュレーション・アプリのために顧客が月額利用料を支払うか?

Trackrは2017年8月16日から9月15日までにICOを実施し、Trackrの仮想通貨である5,850万TKRトークンを発行する予定であり、投資家は5,000TKR=1イーサリアムで購入可能になっている。この記事を執筆している2017年9月11日時点で1イーサリアムが約290米ドル(約32,000円)であるため、Trackrが予定通りICOを完了すれば、およそ3億7,000万円を調達できる計算になる。

ICOで調達した資金は、Trackrのシステム開発などに投入していく予定である。Trackrはシミュレーション・アプリが主力商品であるため、エンジニアやプログラマーが良いプラットフォームを開発し、多くの利用者に使ってもらうことで収益を上げるビジネス・モデルになっている。

ただ、一つ大きな疑問が存在する。それは、「シミュレーション・アプリのために、顧客が月額利用料を支払うか」という根本的なクエスチョンである。いつもながら金融機関勤務時代の経験談を出して恐縮だが、私が銀行員をやっていた時、ポートフォリオ内容を確認するためのプラットフォームは顧客に無料で提供されていた。

私の勤務していた金融機関が顧客に提供していたプラットフォームは、シミュレーションを提示していなかったが、仮にシミュレーションを含む内容であったとしても、有料で提供していたらほとんどの顧客は使わなかったように思う。

情報に対して対価を支払うという意識が日本では低いということもあるが、シミュレーションをしたところで儲かるとは限らないという根本的な事実が背景にあるように感じている。Trackrが提供しようとしているシミュレーション・アプリの需要は存在しているのだろうが、有料で利用する顧客層がどれだけいるかは未知数である。

Trackrのシミュレーション・アプリを使うためには、月額でTKRトークンを支払う必要があるとホワイトペーパーで説明されている。Trackrのアプリをダウンロードし、利用する人が増えれば増えるほどTKRトークンの価格が上昇する仕組みになるわけだ。

仮想通貨取引所との連携が最善の策?

私は仮想通貨評論家であり、Trackrの経営陣でも何でもないが、TKRトークンを上昇させるためには、仮想通貨取引所との連携が最善の策であるように感じる。仮想通貨取引所で口座を持っている人の多くは仮想通貨の売買を行っており、今後のシミュレーション予測を知る需要がもっとも高い場所であるからだ。

TrackrはICO完了後、ある程度の金額を広告、宣伝にも投入すると思われるが、それよりも仮想通貨取引所にアプローチし、共同でマーケティングをする方が効率的であるような気がする。仮想通貨取引所には、Trackrのモンテカルロ・シミュレーションを必要としている人がたくさんいるからだ。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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