【IMMLA】宅配はブロックチェーンに頼る時代?

時間指定配達はガラパゴス

日本の宅配サービスはビジネススクールの教材になっており、いろいろな意味で経営学の話題になっている。時間指定配達は利用者のためのサービスであるように思われがちだが、経営学的視点からすると、再配達を避けるため宅配会社側にとって都合の良い仕組みであるそうだ。

ヤマト運輸がドライバーの待遇改善のため、時間指定配達の見直しを行った。私にとっては影響がなく、2時間ごとに時間指定が可能だった宅配サービスが異常であり、ガラパゴスであると感じていた。

宅配ドライバーの方々がきちんと昼休みを取り、人間らしい生活を送るためであれば、午前と午後、夜の3つくらいの時間指定配達でも良いと考えているくらいである。

ガラパゴス状態になっている宅配業界は離職率も高いようで、各社は人材確保に躍起になっている。週休3日の宅配業者が登場しているくらいで、物流業界は労務管理の面で根本的なイノベーションが求められているようだ。

そんな中、物流の仕組みをブロックチェーンで根本から変革しようとする企業が登場した。その会社の名は、「International Multi-Modal Logistics Application(IMMLA)」である。

UberEATSの仕組みに近い

私は東京23区内を自転車で移動しているが、最近は「UberEATS」の大きなバックを背負い自転車やバイクに乗っている人に遭遇することがある。UberEATSはレストランや飲食店のデリバリーを行うサービスであり、顧客のところに届ける人は自転車かバイクがあれば、誰でもできる仕組みになっている。

UberEATSを使うレストランや飲食店からすると、どこの誰か分からない人に届けてもらうと持ち逃げされるリスクがあり、危険なのではないかと考えるかもしれない。

人間が行う作業であり、持ち逃げされるリスクは当然存在するが、食べ物を送り届ける人は、利用者から毎回評価を受けることになっている。食事がきちんと届かなかったり、時間がかかってしまう場合、評価が下がっていくためリピーターがつかず、レストランや飲食店からの依頼が来なくなるようになっている。

今回紹介するIMMLAは、インターネット上で空輸、陸上輸送、海上輸送などあらゆる物流方法を選択することが可能である。ビッグデータを活用し、一番スピーディで経済的な方法を選択するためのプラットフォームをブロックチェーン経由で提供する予定になっている。

同様の物流サービスを提供するブロックチェーン企業が少ない背景として、「信頼の問題」があったとIMMLAはホワイトペーパー5ページ目で説明している。「知らない業者が輸送したら何が起こるか分からない」という恐怖が、物流業界のイノベーションを妨げていたようだ。

ブロックチェーン技術により、中央管理者がいない状態で、利用者から物流業者に直接連絡をして、荷物を運んでもらうことが可能になったわけである。

また、UberEATSと同様に、IMMLAで荷物を運ぶ物流業者は利用者から評価されることになり、問題があるサービスを提供しているところは自動的に排除される仕組みになっている。また、IMMLAは荷物に対して保険をかけているため、万が一のことがあっても補償される枠組みが整っているようだ。

やめ方を考えた上でブロックチェーンでロシアに参入

IMMLAは将来的に世界展開を考えており、最終的にはグローバルに1パーセントの物流シェアを握りたいとホワイトペーパー上で説明している。IMMLAが最初に参入する市場はロシアであり、その背景にはいくつかの理由があるようだ。

まず、ロシアでは物流ビジネスを開始する際、特別な免許や登録が不要になっていることがある。多くの国では、免許や登録を行った上で物流事業を始める仕組みになっており、これらの地域でIMMLAがビジネスを行う場合、追加のコストや時間が必要になるとホワイトペーパー上で述べている。

IMMLAはロシアでビジネスを始め、テストの意味を含めてさまざまな取り組みを行う予定になっている。免許や登録があるビジネスの場合、始めるまでが大変であると同時に、撤退する際に色々と面倒なことがある。

日本で銀行業務を始める場合、金融庁とやり取りを行って免許を取るという非常に面倒な作業が発生する。一度始めた銀行業務をやめる際は、預金をすべての顧客に返し、資産を他の金融機関に移転させるなどの骨の折れるプロセスがある。

IMMLAは、参入障壁の低いロシアでテスト・マーケティングを行うことによって、うまくいかないサービスはやめるという前提で、事業展開をしようとしているようだ。やめ時を考えた上でビジネスを始めるIMMLAの経営姿勢は、リスク管理の観点から評価できると言えるだろう。

1パーセントの手数料で大丈夫

IMMLAはホワイトペーパーで、利用者が物流業者に払う費用の1パーセントを手数料として徴収する予定であると述べている。2,000円の宅配料金の場合、20円をIMMLAが手数料として取る計算になるが、まあ良心的な水準と言えるだろう。業態は異なるが、類似のロジスティックス関連ブロックチェーン企業の中には10パーセント以上の手数料を取っているところがある。

IMMLAは世界展開を見越して低めの手数料を設定しているようで、ホワイトペーパーの10ページ目で、2023年までにグローバルの貨物輸送市場シェア1パーセントを握りたいと述べている。

世界の貨物輸送市場は1兆米ドル(約110兆円)とIMMLAは計算しており、そのうち1パーセントのシェアを握れば、100億米ドル(約1兆1,000億円)の取引がIMMLA経由で行われることになる。

IMMLAの手数料は取引の1パーセントであるから、1億米ドル(約110億円)が将来的な収益目標になる。今後、IMMLAが予定通り世界の貨物輸送シェア1パーセントを握ることができれば、110億円の収益も実現可能だろう。

ただ、グローバルに1パーセントのシェアを握るためにはいろいろハードルがあり、かなりの額のマーケティング費用を投入し、広告、宣伝に力を入れる必要が出てくる。

先進国の場合、貨物輸送は過当競争の時代に入っており、ブロックチェーンの便利さがあるとしても、新規参入で成功するのはかなりのチャレンジが必要になるだろう。

トークンが売れないと誰も使わない

IMMLAは、2017年9月15日から10月15日までICOを実施し、およそ3,700万米ドル(約41億円)を調達する予定になっている。IMMLAにサービスを提供する荷物輸送業者は、IMMLAが発行する仮想通貨であるIMLトークンを報酬として受け取る仕組みになるようだ。

この場合、IMLトークンに流動性がなければ、荷物輸送業者が集まらないリスクがある。業者からするとIMLトークンをもらっても、法定通貨に交換できる仮想通貨取引所がなければ、IMMLA経由でサービスを提供するインセンティブがないためである。

IMMLAのホワイトペーパーには、今後IMLトークンが仮想通貨取引所で交換可能になるかどうかの言及がなかった。投資家からすると、トークンが売れるようになるかどうかは重要なポイントであり、この点はIMMLAからの説明が欲しいところである。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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