株式発行可能な企業が仮想通貨で資金調達を行う時代がやって来る?

ICOで将来のスーパースターを養成するためのプロジェクトを開始?

私は金融機関で働いていたため、IPO(Initial Public Offering:株式発行による資金調達)についても少しかじったことがある。

また、現在は金融機関に所属していないため、IPOに申し込むことも可能だ(以前は金融機関の企画部門にいたため、証券口座を持つことも難しかった)
IPOを仲介する側、申し込む側を両方経験してみて感じることだが、既存のプロセスは非常に面倒で複雑だ。
経営者にとって、IPOが面倒かつ複雑な手続きであることから、最近は株式発行で資金調達可能な企業でも、仮想通貨を使って資金を調達するICO(Initial CoinOffering)を選択するところが出てきている。
今回紹介する「Science」も、IPOではなくICOを選んだ企業の一つである。

IPOのデメリットがないICO

証券会社経由でIPOに申し込んだ経験のある人であればお分かりだと思うが、ほとんどの場合、抽選から外れてしまい、なかなか当たらないようになっている。
IPOの場合、売り出される株式の数に対して申し込み者の方が多くなることがほとんどであるため、抽選で当たった人しか購入できない仕組みになっているのだ。
また、証券会社で口座を開設しなければIPOに申し込むことができず、証券取引所に株式が上場することになるため、さまざまな仲介者が登場し、それに伴う色々なコストが発生することになる。
ICOであれば、企業が直接仮想通貨を発行し、申し込み者はウェブサイトから投資を行うことが可能になっている。
ICOに申し込むことで、誰でもその企業が発行する仮想通貨を獲得することが可能になる。
この点がIPOとの大きな違いで、株式が手に入りにくいというIPOのデメリットがICOにはないことになる。

IPOではなくICOを選んだ理由を述べているScience

Scienceはアメリカで2011年に設立されたベンチャー・キャピタルであり、ICOを行う企業としては歴史がある方だと言える。
Scienceはウェブサイト上の「よくある質問(FAQ)」部分で、「なぜIPOではなく、ICOを選択したのか?」という質問に対して、以下のように回答している。
「Scienceはブロックチェーン技術の価値とポテンシャルを確信しており、その信念を明確に表明するため、投資先であるブロックチェーン企業が利用するICOによって、資金調達をすることにしました。
」ScienceがICOを選択した理由は非常に分かりやすく、今後ICOに応募する利用者にとっても理解が得られやすいだろう。
Scienceは今後、ブロックチェーン・プラットフォームを運用する企業に投資をする予定であり、これらの組織はICOで資金調達を行うケースがほとんどである。
ベンチャー・キャピタルであるScienceが自らICOを行うことにより、投資先であるブロックチェーン技術を活用した企業がICOを行う際にアドバイスを行いやすくなり、一緒にICOの手法などについて議論しやすくなる。
取引先のビジネスを理解する上でも、ScienceがIPOではなくICOを選択したことは極めて合理的であると言えるだろう。

あまり知られていないベンチャー・キャピタルのビジネスモデル

日本でもベンチャー・キャピタルの数は増加しており、中にはIPOを実施し、東京証券取引所1部に上場しているベンチャー・キャピタル企業もある。
あまりベンチャー・キャピタルに詳しくない人にとっては、彼ら、彼女らが何をしているか分かりにくいかもしれないが、ビジネスモデル自体は非常に分かりやすくシンプルなものになっている。
あるベンチャー企業が、事業拡大のために資金調達を検討しているケースを考えてみよう。
このベンチャー企業の経営陣は、ベンチャー・キャピタルやエンジェルと呼ばれる個人投資家などをインターネット上で検索して連絡することもできるし、経営者同士のつながりで紹介してもらうことも可能である。
連絡を受けたベンチャー・キャピタルは、資金調達を希望しているベンチャー企業の経営陣と面談し、財務諸表や事業計画書などの資料を確認し、出資の可否を決定することになる。
最近は、数千万円から1億円の間で、ベンチャー・キャピタルから出資を受けるベンチャー企業が多くなっているようだ。
日本のベンチャー企業がベンチャー・キャピタルやエンジェルなどから出資を受ける際、ほとんどのケースで第三者割当(わりあて)増資という手法を取る。
少々専門的ではあるが、第三者割当増資になると、ベンチャー企業はベンチャー・キャピタルやエンジェルのために株式を新しく発行し、それと引き換えに出資を受けることになる。
出資を行ったベンチャー・キャピタルは、そのベンチャー企業に対して取締役を送り込むことが一般的になっている。
株主になったベンチャー・キャピタルは、取締役を通じて投資先であるベンチャー企業の経営をモニタリングし、事業を拡大させ、リスクを軽減させるためのアドバイスを行うことになる。
そのベンチャー企業が成長し、将来的にIPOしてくれることがベンチャー・キャピタルの最終的な目標である。
IPOで上場してくれれば、ベンチャー・キャピタルが保有しているベンチャー企業の株式は大きな利益を生むことになるからだ。
投資先のベンチャー企業がIPOを行ったところで、株式を市場で売却するベンチャー・キャピタルが多いが、中には継続して保有し、配当や更なる値上がりを狙う場合もある。

Scienceのビジネスモデル自体は伝統的なベンチャー・キャピタルと変わらない?

Scienceのビジネスモデルは、伝統的なベンチャー・キャピタルと基本的に変わらないが、相違点としては、投資先がICOを行うブロックチェーン企業ということだろう。
Scienceは、これまでのベンチャー・キャピタルとしての経験を活用し、将来値上がりが期待できそうな仮想通貨を発行するブロックチェーン企業を発掘し、そこに資金を投入していく予定である。
従来のベンチャー・キャピタル業務とは違い、取締役などを投資先に送り込む必要がないため、ICOによる出資はコスト面でもメリットが多く、Scienceは、ブロックチェーン企業の発掘に経営資源を集中することが可能になる。
伝統的なベンチャー・キャピタルは、銀行などの既存金融機関などから資金を調達することが多かった。
しかしながら、ScienceはICOによって資金調達を行うため、銀行などとの調整に必要な時間や労力を省略することが可能になる。
Scienceは2011年の創業以来、70社以上に出資しているベンチャー・キャピタルであり、これまでの経験や積み上げてきた専門性を活用し、今後有望なブロックチェーン企業に投資し、資金回収を行うとしている。

Scienceは2017年10月にICOを実施する予定であり、投資家はビットコイン、イーサリアムなどでScience Tokenを購入することが可能である。
Scienceの運用方法は既存の投資信託の仕組みに近く、Science Tokenを購入した投資家は、Scienceが出資するブロックチェーン企業の収益によって、リターンを得られるかどうかが決まってくる。
ICOブームでさまざまな仮想通貨が発行され、どこに投資すればよいか分からないという人は多い。
そんな場合、プロのベンチャー・キャピタルであるScienceが行うICOへの投資は、ポートフォリオを組むという上で分かりやすく、複数の仮想通貨への出資に近い効果が期待できるため、効率的な運用方法になるかもしれない。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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