ウルグアイの中央銀行が法定仮想通貨の試験運用を開始

肉とマテ茶の国ウルグアイ

私は2001年にウルグアイに行ったことがあり、いろいろな意味で興味深い経験だった。アルゼンチンのブエノスアイレスに知り合いがおり、彼が車でウルグアイまで連れて行ってくれたのである。

ウルグアイの有名な肉料理として「アサ―ド」があり、牛や羊の肉をかたまりのまま専用の鉄製グリルで焼いて、豪快に食べるのが現地のしきたりのようだった。

私は結構肉好きであり、現在でも金曜日の昼はローストビーフを食べるようにしているくらいなのだが、ウルグアイのアサ―ドは食べきれないくらいの肉がでてきて、さすがに全部食べることはできなかった。

また、ウルグアイはマテ茶も有名である。「飲む野菜」とも呼ばれるマテ茶を、ウルグアイの人々は街のあちこちで飲んでいた。

歩きながらマテ茶のポットを携帯するのは普通のようだが、自転車に乗りながらマテ茶のポットを脇の下に抱えている人を見た時はびっくりしたものだ。

16年前に訪れた愛しい国ウルグアイであるが、2017年11月に入って仮想通貨業界から注目を集めている。

ウルグアイの中央銀行が、ブロックチェーン技術を使った法定仮想通貨の試験運用を開始したのである。

ほとんどの中央銀行は仮想通貨に否定的

国が発行を検討している仮想通貨としては、エストニアのエストコインが有名である。人口約130万の小さな国であるエストニアは電子政府化を進めており、税金が自動計算されるため、会計士と税理士がいなくなったとも言われている。

そんなエストニアは、エストコインと呼ばれる仮想通貨の研究を続けており、公式ウェブサイトまであってさまざまな情報発信を行っている。

しかしながら、2017年に入って欧州中央銀行のドラギ総裁が「ユーロ圏の通貨はユーロ」と発言し、エストニア政府が進めようとしているエストコインを牽制したと考えられている。

エストニアはユーロ圏であり、国内の法定通貨はユーロである。そのため、欧州中央銀行には歯向かえない状態になっており、エストコインの研究を進めてきたエストニア政府が今後どのような方策を取るか注目されている。

ドラギ総裁だけではなく、世界中の中央銀行は仮想通貨に対して否定的な発言をするケースが多い。
ウクライナ中央銀行のチュリティ副議長は、ビットコインが中央管理されていないことを指摘して、「あれは通貨ではない」とコメントしている。

ビットコインが通貨かどうかについては、11月13日に掲載された私の記事「【コインマンと考える】ビットコインは通貨なのか?」で分析を行っているため、一度目を通していただきたい。

インドネシアの中央銀行は、ビットコインを法的な支払い方法として認めないと繰り返し述べている。

ほとんどの中央銀行が仮想通貨に対して否定的な見解を述べる中、ウルグアイの中央銀行が法定仮想通貨の試験運用を開始したことは、世界中で大きく報道されている。

現金の持ち運びはリスクが高すぎる

私が以前所属していた外資系金融機関では、「営業担当者は勤務時間中にレンタカーを借りてはいけない」という謎のルールが存在していた。

前職の金融機関は世界的なグローバル企業であり、各国に支店を配置してビジネスを展開していた。

「レンタカー禁止」という謎のルールができた背景には、南米での不祥事があったようである。

南米のある国の営業担当者が顧客から預かった資金を横領し、レンタカーを借りて国境を越えて行方をくらませるという事件が過去に発生したのだ。

日本の感覚からすると、銀行員が顧客の金を横領し、レンタカーで国外逃亡というのは理解しがたいと思うが、海外ではこういうことが起こりえるのである。

この記事を執筆しているのは2017年11月14日であるが、同じ日の日本経済新聞朝刊に「ウルグアイが法定デジタル通貨」という記事が掲載されていた。

その中で、「紙幣の印刷や全国への流通、移動中の警備は高額だ」というウルグアイ中央銀行ベルガラ総裁のコメントが紹介されている。

そう、治安が不安定な国での現金の持ち運びはリスクが高すぎるのだ。仮想通貨であれば、現金が盗まれるというリスクはなくなり、オンライン上ですべてのやり取りが可能になる。

ウルグアイの中央銀行が法定仮想通貨の試験運用を開始した背景には、マネーロンダリングや脱税を防ぎたいという考えもあるようだ。

アメリカの大手金融機関トップの中には、「ビットコインには参入しない。マネーロンダリングのリスクがあるから」と述べる人がいたりする。

ウルグアイの中央銀行は、現金の方がマネーロンダリングのリスクが高いと考えているのだから、十人十色ということなのだろう。

ビットコインのような仮想通貨ではないことを強調

ウルグアイ中央銀行は、2017年11月3日から法定仮想通貨である「eペソ」を発行した。興味深いのは、ベルガラ総裁がeペソについて、「ビットコインのような仮想通貨ではない」ことを強調していることだ。

中央銀行からするとビットコインは乱高下を繰り返しており、通貨としてあまり優秀ではないと考えているのだろう。

中央銀行は「通貨の番人」であるのと同時に、「物価の番人」でもある。物価の番人である中央銀行からすると、ビットコインはとんでもない通貨に見えるのかもしれない。

eペソは法定通貨であるペソと同価値になっており、「新しい通貨ではなく、既にある法定通貨であるペソと同じ」ことをウルグアイの中央銀行は強調している。

ウルグアイは、人口がおよそ344万人と少ない。エストコインの研究をしているエストニアも約130万人と人口が少ない国である。

人口が多くない国では紙幣や硬貨の維持コストが問題になるようで、仮想通貨であればオンラインですべて処理できることもeペソ誕生の背景にあるようだ。

2018年からメガバンクも似た仮想通貨を発行予定

eペソは半年間試験利用され、ウルグアイ国民の反応をみながら今後の運用を検討していくことになっている。

eペソの保有者は、店舗での買い物や公共料金の支払い、個人間の送金などで利用でき、法定通貨そのものとして使うことができる仮想通貨である。

日本のメガバンクなどが2018年から運用開始を目指している仮想通貨も、eペソに近い形になる予定である。

銀行のATMを使い、1円=1コインの等価交換が可能になる予定で、メガバンクが発行する仮想通貨というよりも、「円とほとんど同じだけど紙幣や硬貨がないもの」という感じになりそうだ。

この記事を書いているのは2017年11月14日だが、昨日から今日にかけて日本の銀行の決算発表があり、その中で人員削減と支店縮小を同時に公表するところがあった。

ウルグアイ中央銀行は、紙幣や硬貨の維持コストを削減するためにeペソを発行したようだが、日本のメガバンクも都心の一等地に支店を構えて、現金輸送車を毎日走らせるビジネスモデルが限界に近付いていることを感じているようだ。

そう言えば、私は今月に入ってから一度も現金を使っていない。クレジットカードで全て決済しているからだが、非常に便利で安全だ(財布にほとんど現金が入っていないから)。

日本から紙幣や硬貨がなくなることはないと思うが、eペソに似た「e円」が登場すれば、日本の仮想通貨業界がもっと盛り上がるかもしれないと感じた。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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