【コラム】匿名性が高い仮想通貨は当局からにらまれやすい?

仮想通貨の得意分野は十人十色

世界には1,000以上の仮想通貨が存在していると言われており、その数は現在も増え続けている。ただ、それぞれの仮想通貨に特徴があって得意な分野も異なっているケースが多い。

似たような仮想通貨ばかりであれば、ICO企業が増え続ける必要がないわけであって、独自性を持った仮想通貨が出てきているからさまざまなイノベーションが起こっているとも言える。

もっとも有名な仮想通貨であるビットコインは決済に強みを持っていることから、日本でも家電量販店で支払いが可能になるなど、実際の店舗やインターネットショップでの利用が拡大している。

仮想通貨業界で2位の時価総額を持つイーサリアムは、スマートコントラクトというプラットフォームを提供することができる。これにより、ICO企業は仮想通貨を発行し、オンライン上で仲介者を入れることなく自動で契約を執行することが可能になっている。

仮想通貨業界3位のリップルは、2017年になってシンガポールにオフィスを開設するなど各国に拠点網を拡大しており、金融機関との取引を通じて仮想通貨業界で独特の地位を確立しつつある。

他にもいろいろな仮想通貨があるが、最近注目されているのは匿名性が高い取引が可能なMoneroZcashなどの仮想通貨である。

どこにどれだけ送金したか分からないMonero

2014年4月に公開されたMoneroは、富裕層などの匿名決済を希望する投資家からニーズが高い仮想通貨と言われている。仮想通貨の場合、多くが高度な暗号処理を行って取引する仕組みを採用しているが、Moneroは特殊な暗号テクノロジーであるリング署名を採用している。

リング署名によってMoneroの決済は、どこにどれだけ送金したか外部から判別できないようになっている。ただ、どこにどれだけ送金したか分からないということは、地下経済での決済手段や闇の取引方法として使われやすいことを意味している。

また、Moneroはリング署名に加えて、ワンタイム・アドレスという技術も導入している。ワンタイム・アドレスは、名前の通り一回利用されるためだけの送金用アドレスであり、次の送金では別のアドレスが自動で用意される。

リング署名とワンタイム・アドレスを導入している仮想通貨は他にあまりないため、Moneroが匿名性の高い仮想通貨であり、誰にも知られることなく送金や決済を行いたいと考えている人たちから評価されている理由になっている。

追跡不可能でオプション付きのZcash

Zcashは、2016年10月に登場した比較的新しい仮想通貨である。Zcashの取り扱いが始まった時、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙やイギリスのタイム紙などの大手メディアが報道して話題になった。登場から1年しか経っていないにもかかわらず、Zcashは仮想通貨業界で時価総額16位に位置している(2017年10月6日時点)。

日本の大手仮想通貨取引所でもZcashの売買が可能になっており、海外だけではなく、日本でも知名度が上がっている仮想通貨の一つである。また、Zcashは2017年5月にアメリカの大手金融機関と連携し、その後大きく価格が上昇した。

Zcashの高い匿名性は、ゼロ知識証明という技術によって実現されている。ゼロ知識証明によって特別な暗号化処理が行われるため、送金先と取引額を外部に隠した状態で決済を行うことが可能になっているのだ。

また、Zcashにはオプションがあり、取引を公開した状態での送金処理も可能になっている。この融通性がZcashの特徴であり、短期間で時価総額を大きく伸ばした要因の一つであると考えられている。

欧州の当局がMoneroとZcashに目をつけた

政府や銀行だけではなく、家族や友人、知り合いなどにも知られることなく、こっそりと送金することができるMoneroとZcashは、利用者からすると非常に便利な存在のように見える。

MoneroやZcashが合法的に取引される分には問題ないが、匿名性が高いということは、犯罪に利用されても当局からすると摘発しにくいという諸刃の剣になりうるリスクを抱えている。

最近は中国や韓国でICOが禁止されたり、アメリカの証券取引委員会がICO企業を告発するなどの動きが出ており、仮想通貨を取り巻く状況は政府の意向で大きく揺れている。
そんな中、欧州の当局が発表した2017年のサイバー犯罪に関する報告書が仮想通貨業界で話題になっている。

ヨーロッパにはユーロポールと呼ばれる専門機関があり、欧州各国の警察当局が情報を共有して犯罪に対処するため、さまざまな活動を行っている。そのユーロポールが発表した2017年の報告書の中で、仮想通貨がサイバー犯罪で利用される可能性について言及している。

ユーロポールによると、犯罪者が利用する仮想通貨の中ではビットコインが一番大きな位置を占めているが、MoneroやZcashなどのアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)の人気も高まってきているそうだ。

仮想通貨は資金逃避目的で使われやすい

2009年から運用が始まった仮想通貨であるが、資金逃避目的で利用されるリスクは比較的早い段階で指摘されていた。実際に、資金逃避手段として仮想通貨が注目されたのは、経済危機が発生したギリシャとキプロスだった。

2010年から経済危機が表面化していたギリシャでは、2011年に入って大手格付け機関がギリシャ国債の格付けを投資不適格レベルに引き下げた。これによって、ギリシャ国債の買い手がつかなくなり、2012年3月には利回りが35パーセント以上になり、国債価格が暴落した。

また、トルコの南にある小さな島国であるキプロスでは、2大銀行が多額のギリシャ国債を保有していたことから実質的に債務超過状態になっていた。財政危機と金融不安のダブルパンチを受けたギリシャとキプロスでは経済が大混乱に陥り、既存の金融システムに対する不信が爆発した。

そんな中、ギリシャとキプロスではビットコインのATMが登場し、仮想通貨を使って資金を国外に逃避する動きが加速した。

インターネットにつながっているパソコンかスマートフォンがあれば、誰でも仮想通貨を購入することができ、政府に知られる可能性が低い状態で、海外への送金が簡単に安くスピーディに行えたためである。

政府が仮想通貨を敵視するのは税金が取れなくなるから

日本では仮想通貨取引所に対する登録制度が始まり、今後仮想通貨ビジネスの拡大が期待されている。
ただ、仮想通貨に対する法整備を世界に先駆けて進めている日本は例外的な存在である。

各国の中央銀行や金融当局の幹部が、仮想通貨に対する監督強化を示唆するコメントをしており、ある日突然どこかの国や地域でビットコインなどの取引ができなくなったり、ICO禁止措置が出される可能性がある。

政府が仮想通貨を敵視するのは税金が取れなくなる可能性があるためであり、当局が把握できない状態で資金が国外に出ることを抑制したいという意図が透けて見える。

政府が監視を強めれば強めるほど、仮想通貨の技術は更に進化していくことが予想され、イタチごっこの様相を呈している。その中でも、MoneroやZcashは当局から目の敵にされやすい存在とも考えられ、今後の動きから目が離せなくなっている。

コインマン

日本初の仮想通貨評論家「コインマン」として活動する元外資系金融マン。債券ブローカーとしてニューヨークで勤務し、東京では当局対応として金融庁と対峙したリアル半沢直樹。
毎朝4時に起床し、仮想通貨ニュースを執筆する日々を過ごしている。フランスに留学していた親仏家であり、ヨガインストラクターを目指していたヨガマニアでもある。

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